- ARTICLES
- デ・キリコから注目のブラック・アーティストの日本初個展まで / 編集部が今月、これに行きたい アート備忘録 2024年4月編
SERIES
2024.04.05
デ・キリコから注目のブラック・アーティストの日本初個展まで / 編集部が今月、これに行きたい アート備忘録 2024年4月編
Illustration / Nao Sakamoto
たくさんの展覧会やイベントの中から、絶対に行くべきアートスポットを編集部が厳選! 毎月のおすすめを7件ピックアップしてご紹介します。
4月は東京都美術館でデ・キリコの大回顧展、森美術館では世界が注目するブラック・アーティストのシアスター・ゲイツによる日本初個展がスタート。京都では今年も「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」が開幕します。
「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」(青森県立美術館ほか・青森)
参考図版 原口典之 《F-8E CRUSADER》 (「十字路-CROSSROAD」ART BASE 百島広島での展示風景) 2014年 ©ART BASE MOMOSHIMA
2020年から「5館が五感を刺激する―AOMORI GOKAN」プロジェクトを発信してきた青森県内の5つの美術館・アートセンター(青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館)が、「つらなりのはらっぱ」をテーマに連携する初めてのアートフェスティバル。青森県立美術館では、同館を設計した青木淳の「原っぱ」論を援用し、展示室だけでなく館内の様々な場所を展示に活用する「かさなりとまじわり」が開催。各会場で複数の展覧会を同時に開催するほか、共通企画として栗林隆の《元気炉》が各会場を巡回。個性的な5館を一気にコンプリートしてみては?
栗林隆 《元気炉 》2022年 (《蚊帳の外》ドクメンタ15、ドイツ・カッセル)より Photo:Rai Shizuno
会期:2024年4月13日(土)〜9月1日(日)
会場:青森県立美術館、青森公立大学 国際芸術センター青森、弘前れんが倉庫美術館、八戸市美術館、十和田市現代美術館、この他県内各地での連携企画を予定
公式サイトはこちら
「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024」(二条城ほか・京都)
Viviane Sassen, Eudocimus Ruber, from the series Of Mud and Lotus, 2017 © Viviane Sassen and Stevenson(Johannesburg / Cape Town / Amsterdam)
12回目を迎える国際的な写真祭「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024」。京都の12会場で13の展覧会が開催され、10ヶ国から13名アーティストが集結します。2024年のテーマは「SOURCE」。源(SOURCE)は初めであり、始まりであり、すべてのものの起源であるという主題に共鳴するかのような作品を見せてくれる面々は、クラウディア・アンドゥハル、Birdhead(鳥頭)、ヴィヴィアン・サッセン、ルシアン・クレルグ、ティエリー・アルドゥアン、川田喜久治、柏田テツヲ、ヨリヤス、ジェームス・モリソン、川内倫子、潮田登久子、ジャイシング・ナゲシュワラ、イランの市民と写真家たち。また、サテライトイベントのKG+SELECTでは公募の中から審査委員会によって選出された10組の出展も。
Claudia Andujar, Susi Korihana thëri, Catrimani, 1972–1974. Claudia Andujar and The Yanomami Struggle exhibition / Instituto Moreira Salles collection
会期:2024年4月13日(土)〜5月12日(日)
会場:京都文化博物館 別館、誉田屋源兵衛 竹院の間、黒蔵、京都新聞ビル地下1階(印刷工場跡)、二条城 二の丸御殿 台所・御清所、京都市京セラ美術館 本館 南回廊 2階、ASPHODEL、出町桝形商店街、DELTA/KYOTOGRAPHIE Permanent Space、京都芸術センター、嶋臺(しまだい)ギャラリー、八竹庵(旧川崎家住宅)、両足院、TIME’S
公式サイトはこちら
「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」(森美術館・東京)
シアスター・ゲイツ《へヴンリー・コード》 2022年 撮影:ジム・プリンツ・フォトグラフィー
世界が注目するブラック・アーティスト、シアスター・ゲイツの日本初個展が開催。彫刻と陶芸作品を中心に、建築、音楽、パフォーマンス、ファッション、デザインなど、さまざまな活動で国際的に高く評価されるゲイツ。創作の礎にはアフリカ系アメリカ人としてのバックグラウンドがあり、本展は作品とともに背景にある黒人史や黒人文化を包括的に紹介しています。さらに注目すべきはアメリカの公民権運動の一翼を担ったスローガン「ブラック・イズ・ビューティフル」と日本の「民藝運動」の哲学とを融合した、独自の美学を表す「アフロ民藝」。この実験的な試みを軸に、これまでの代表作のみならず、新作を含む日本文化と関係の深い作品などが登場します。
シアスター・ゲイツ 展示風景:「シアスター・ゲイツ展:土の説教」ホワイトチャペル・ギャラリー(ロンドン)、2021-2022年 撮影:テオ・クリステリス 画像提供:ホワイトチャペル・ギャラリー(ロンドン)
「デ・キリコ展」(東京都美術館・東京)
《形而上的なミューズたち》 1918年 カステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館(フランチェスコ・フェデリコ・チェッルーティ美術財団より長期貸与) © Castello di Rivoli Museo d'Arte Contemporanea, Rivoli-Turin, long-term loan from Fondazione Cerruti © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024
20世紀を代表する巨匠のひとり、ジョルジョ・デ・キリコ。とりわけ代名詞ともいえる作品群「形而上絵画」は、サルバドール・ダリやルネ・マグリットをはじめとした数多くの芸術家や国際的な芸術運動に衝撃を与えました。本展は彼のおよそ70年にわたる画業を「イタリア広場」「形而上的室内」「マヌカン」などのテーマに分け、初期から晩年までの絵画を余すところなく紹介する、日本では10年ぶりの大規模な回顧展。特に1910年代の「形而上絵画」は世界中に散らばっており、今回はそれらがまとめてみられる貴重な機会です。さらに彼が手掛けた彫刻や舞台芸術、挿絵など幅広い創作活動を紹介する展示も。音声ガイドはムロツヨシさん。
《「ダヴィデ」の手がある形而上的室内》1968年 ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団 © Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024
「青山悟 刺繍少年フォーエバー」(目黒区美術館・東京)
青山悟《東京の朝》2004年 ポリエステルに刺繍(コットン、ポリエステル糸)中尾浩治蔵 撮影:宮島径 ©AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery
目黒区出身の現代美術作家・青山悟による美術館初個展。工業用ミシンを用い、近代化以降、変容し続ける人間性や労働の価値を問い続けながら、刺繍というメディアの枠を拡張させる作品を数々発表している青山。展覧会名のサブタイトルが「刺繍少年」となっているのは、ジェンダーやエイジズム(年齢差別)の問題も暗示してのこと。そもそも刺繍は、歴史的に女性の仕事であったという点で、「女性がするもの」というジェンダーバイアスがいまだに根強い分野。そんな社会が抱えるさまざまな問題に対して敏感に反応しながら、ミシン針でチクリと風刺をきかせているのが彼の作品の特徴です。本展は刺繍作品に加え、出身校で描いた初期作品も公開します。
青山悟《News from Nowhere (Labour day)》2019年 シルクスクリーンプリントに刺繍、ドローイング 個人蔵 撮影:宮島径 ©AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery
「ADAPTATION - KYNE」(福岡市美術館・福岡)
KYNE《Untitled》2024年
福岡市美術館2階特別展示室で開催されるのは、福岡を拠点とするアーティスト・KYNE(キネ)の国内初となる美術館での大規模個展。KYNEの代名詞は、”KYNE-girl"と呼ばれるクールな表情の女性たち。アパレルブランドとのコラボレーション、CDジャケットや広告など活躍の幅は広く、国内外で大きな注目を集めています。本展では、巨大な新作壁画を含む、絵画、版画、ライトボックス、立体、ドローイングなど、約150点を一挙に公開。福岡土産の定番「博多通りもん」、福岡発のステーショナリーブランド・HIGHTIDE、陶磁器ブランド・MARUHIRO等とのコラボレーションアイテムが販売される展覧会限定のショップにも注目です。
KYNE《Untitled》2024年
前田エマさんおすすめの本は森村泰昌『まねぶ美術史』
「森村泰昌 楽しい五重人格」(シュウゴアーツ・東京)
森村泰昌《カフカのいる風景 2》2015/2024, ゼラチンシルバープリント, image: 29.7x21.6cm, Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts
名画の登場人物や歴史上の人物、女優などに扮するセルフポートレート作品で知られる現代美術家・森村泰昌。モチーフとなる人物/作品について念密なリサーチをし、ジオラマ、スタジオセットの作成、コスチュームやメイクなどの創作過程を通じ、独自の視点から対象に迫ることで作品が完成されています。今展に登場するのは、森村扮する「甲斐 庄楠音」「ナポレオン」「ミロの絵画」「カフカ」「魯迅」。出品される森村の最新作、未発表作、近作は、相互に関係性を持たない五つのセクション (=五重人格)を構成し、自在な展開をみせてくれています。計14点の出品作が奏でる不協和音とともに、「森村泰昌」の楽しい多重人格性を感じられそうです。
森村泰昌《甲斐庄幻想》2023/2024, 和紙にアーカイバルインクジェットプリント, 120x70cm, Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts
会期:2024年4月19日(金)~6月1日(土)
会場:シュウゴアーツ
開廊時間:11:00~18:00(日曜日・月曜日・祝日休廊)
住所:東京都港区六本⽊6-5-24 complex665 2F
公式サイトはこちら
新着記事 New articles
-
INTERVIEW
2024.11.22
ロクロから生み出される記憶のパーツ / 陶作家・酒井智也がマンガから得た創作の宇宙
-
INTERVIEW
2024.11.22
笑って楽しんでくれる目の前の人のために / イラストレーター・平沼久幸がマンガから得た観察力
-
INTERVIEW
2024.11.20
日常にアートを届けるために、CADANが考えていること / 山本裕子(ANOMALY)×大柄聡子(Satoko Oe Contemporary)×山本豊津(東京画廊+BTAP)
-
SERIES
2024.11.20
東京都庁にある関根伸夫のパブリックアートで「もの派」の見方を学べる / 連載「街中アート探訪記」Vol.34
-
SERIES
2024.11.13
北欧、暮らしの道具店・佐藤友子の、アートを通じて「自分の暮らしを編集」する楽しさ / 連載「わたしが手にしたはじめてのアート」Vol.29
-
NEWS
2024.11.07
アートと音楽で名古屋・栄を彩る週末 / 公園とまちの新しい可能性を発明するイベント「PARK?」が開催