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ESSAY
2023.03.24
漆と金継ぎの修復家・河井菜摘に聞く“オススメの京都” / 連載「あの街のアートとカルチャー」Vol.2
Edit / Eisuke Onda
Design / Hiroki IIMURA
最近、面白かった展示は? 注目のアーティストは? どんなカルチャーに触れて感動した? さまざまな場所で生活しながら、新しい文化を探す人たちに問いかける連載「あの街のアートとカルチャー」。
今回登場するのは“京都”“東京”“鳥取”の三拠点を行き来しながら生活する漆と金継ぎの修復家・河井菜摘さん。特に学生時代から慣れ親しんだ京都の街で、最近観た好きな展示や、お気に入りの場所、春になると観たくなる映画など、さまざまなアートとカルチャーの話を教えてもらった。
Q1
最近、観た展示は?
A1
没後40年 黒田辰秋展 ―山本爲三郎コレクションより
京都出身の漆芸家、木工家の黒田辰秋。20代で柳宗悦や河井寬次郎と出会い民藝運動(一般民衆の生活の中から生まれた、素朴で郷土色の強い実用的な工芸品は、美術品に負けない美しさがあると唱えた運動)とも関わった
「民藝運動において漆芸と木工芸の分野で大きな役割を果たした黒田辰秋。朴訥ながらも一目で黒田作品とわかるその存在感を、アサヒビール大山崎山荘美術館で見れることを楽しみにしていました。建物の雰囲気もロケーションもとても気持ちのいい場所です」
アサヒビール大山崎山荘美術館の外観
「アサヒビール初代社長、山本為三郎は民藝運動を大きく支援し、黒田作品の多くを暮らしにも取り入れていました。実際に山本が生活の中で使用していたそれらが寄贈されたコレクション展でもある今回は、黒田と山本が亡き後もなお縁が強く結ばれていることを物語り、物の背景に暮らしと人の気配を感じる民藝の本質を表したような展示でした」
会期:2023年1月21日(土)-2023年5月7日(日)
会場:アサヒビール大山崎山荘美術館
公式HPはこちら
Q2
最近、注目のアーティストは?
A2
風能奈々
《秘密基地 A secret base》
「風能奈々さんは長年気になっている作家さんで、一見可愛らしいモチーフは異国の絵本のような雰囲気でもある一方で常にどこか怖さを持ち合わせていて、その独特な雰囲気に惹かれます。いつか絵を購入できればと考えています」
《奥の緑が聞く Green is listnening behind》
Q3
最近、お気に入りのスポットは?
A3
その1:古道具屋〈sowgen〉
「家具が欲しい時によくのぞく古道具屋さん。大型の家具がたくさん陳列されていて、商品の回転も早く見ていて飽きないです。去年はここで3点ほどキャビネットやガラスのシェルフの家具を購入しました。京都からヤマト便での配送も対応してくれます」
河井さんが鳥取のご自宅で愛用するsowgenの家具たち
住所:京都市中京区高宮町573
営業時間:11:30-19:00
公式HPはこちら
その2:ヴィンテージショップ〈gris-gris 〉
「京都で20年以上続く古着屋さん。店主のノリさんとアッキーさんとおしゃべりをしながら、2人が買い付けしてきた古着を見たり袖を通すのが楽しい時間でつい寄りたくなる場所です。長年同じ場所でお店が続いているのは、きっとそう思う人が後を絶たないから」
20周年記念イベント時、河井さんがお店の鏡につけたロゴの蒔絵
住所:京都市中京区中之町9 ASAIビル2F
営業時間:12:00-20:00 木曜と第2第3水曜休
Instagramはこちら
Q4
最近、感動した作品は?
A4
映画『少年の君』
香港出身の俳優デレク・ツァンが監督を務めた青春映画。いじめ、受験戦争、ストリートチルドレンなど中国の社会問題を描いたサスペンス作 / 2019年製作 / 135分 / 中国・香港合作
「友人がおすすめしていて気になっていた映画だったのですが、前情報なく観てただただ圧倒されました。中国の抱える様々な問題に絶句し、終始心を動かされっぱなしでした。主演女優の周冬雨の演技力は目を見張るものがあり、高校生役を演じているのですが当時20代後半だったとあとで知り驚きました」
*U-NEXT、Amazonプライムなどのサブスクでも視聴可能
Q5
桜の季節になると思い浮かべる作品は?
A5
映画『四月物語』
監督脚本は岩井俊二。松たか子が演じる北海道から上京した女子大生の恋心を描く青春ドラマ。今や映画、ドラマに引っ張りだこの松たか子の初主演映画でもある/1998年製作/80分/日本
「桜が咲く季節になると見かける一人暮らしの準備をする若者たち。あのフレッシュさを見かけるたびに当時の自分を重ねてなんとも言えない気持ちが込み上げてきます。この映画の松たか子さん演じる主人公はその瑞々しさの最たるもの。冒頭で松本白鸚さんや松本幸四郎さんはじめとする実際の家族が家族役で出てくるところも見どころです」
*U-NEXTなどのサブスクでも視聴可能
Q6
次に観たい展示は?
A6
甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性
大正から昭和にかけて京都で活躍した⽇本画家・甲斐荘楠⾳の⼤規模回顧展
「日本画家であり、映画界で衣装・風俗考証なども手かげていたという甲斐荘楠音(かいのしょうただおと)のチラシを手に取った時から会期スタートを楽しみにしていました。暖かくなってきたのでまた近々自転車でふらりと観に行こうと思っています」
会期:2023年2月11日[土・祝]ー4月9日[日]
会場:京都国立近代美術館
公式HPはこちら
DOORS
河井菜摘
漆と金継ぎの修復家
1984年大阪生まれ。京都市立芸術大学、大学院にて漆工を学び、2015年に独立。漆と金継ぎがメインの修復家として活動。同じく2015年にInstagramをきっかけに購入した鳥取の山の家で過ごしながら、京都・東京・鳥取の3拠点生活を送る。Instagram「買い物(かいもん)マガジン」主宰。
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