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ESSAY

2022.02.18

新たな旅へと誘う、繊細でいて力強い色の連なり / ワタナベマキ(料理家)

Text / Maki Watanabe
Photo / Fujiko Tanaka
Edit / Emi Fukushima

特集「部屋から、遠くへ」では、アートを愛する方々が“遠く”を感じる作品についてのエッセイを綴ります。料理家のワタナベマキさんが紹介するのは、旅先での不思議な縁に導かれて出合った、20世紀を代表するアメリカ人女性画家ジョージア・オキーフの作品。作品集を眺めながら、また次の旅へと思いを馳せるそうです。

写真はワタナベさんの私物『Watercolors 1916 - 1918』

ジョージア・オキーフ作品集『Watercolors 1916 - 1918』

2016年にサンタフェのジョージア・オキーフ美術館にて開催された展覧会の際に刊行されたジョージア・オキーフの作品集。ニューヨークで画家としての本格的なキャリアを積む前のテキサスに住んでいた1916年から1918年の間に描いた水彩画を約50点収録している。

旅先・ハワイでの度重なる偶然に導かれて。

私がジョージア・オキーフの作品に出合ったのは10数年前。ハワイのマウイ島を訪れた際、「オキーフがこの辺りに滞在していくつもの作品を残しているのよ」と現地の方に話を伺ったことがきっかけでした。

その後、モロカイ島を訪れた際には、友人が乗っていた車が巡り巡ってオキーフが所有していた車だったり、さらに立ち寄ったオアフ島のホノルル美術館で、オキーフの作品を見ることになったり。いくつかの偶然か重なって、導かれるようにして彼女の作品やジョージア・オキーフという女性に惹かれるようになりました。

オキーフの作品は、花、風景などがとても有名ですが、私は抽象画的な側面が強い作品に惹かれます。なかでも作品集『watercolors 1916 - 1918』は流れるようなタッチで描かれた人物や風景のグラデーションや色味がとても女性的でありながら、力強いメッセージが感じられ、私にとってとても心地よい作品集です。旅ができるようになったら、まずはオキーフの自邸があるニューメキシコを訪れたいと思いを寄せつつ、今は作品を見ながら旅の準備をしています。

DOORS

ワタナベマキ

料理家

雑誌や書籍、イベントなどで幅広く活躍。グラフィックデザイナーを経て料理家の道へ進む。日々食べるものを美味しく丁寧につくるお弁当や朝ごはんなど、毎日の料理の参考になる著書を多数出版。2021年からはオンライン料理教室「3“S”COOKING LESSON」を始め、シンプルな調味料で旬の素材を活かした料理の基本を教えている。

volume 01

部屋から、遠くへ

コロナ禍で引きこもらざるを得なかったこの2年間。半径5mの暮らしを慈しむ大切さも知ることができたけど、ようやく少しずつモードが変わってきた今だからこそ、顔を上げてまた広い外の世界に目を向けてみることも思い出してみよう。
ARToVILLA創刊号となる最初のテーマは「部屋から、遠くへ」。ここではないどこかへと、時空を超えて思考を連れて行ってくれる――アートにはそういう力もあると信じています。
2022年、ARToVILLAに触れてくださる皆さんが遠くへ飛躍する一年になることを願って。

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