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ESSAY
2023.03.31
本屋青旗店主・川﨑雄平に聞く“福岡”の新しいオルタナティブ / 連載「あの街のアートとカルチャー」Vol.3
Edit / Eisuke Onda
Design / Hiroki IIMURA
最近、面白かった展示は? 注目のアーティストは? どんなカルチャーに触れて感動した? さまざまな場所で生活しながら、新しい文化を探す人たちに問いかける連載「あの街のアートとカルチャー」。
今回教えてくれるのは、福岡のアートブックやZINE、プロダクトを中心に、視覚文化を基軸とした本屋〈本屋青旗〉のオーナー川﨑雄平さん。最近、オルタナティブスペースやカルチャースポットが増えている“福岡”でオススメの場所やアーティストについて教えてもらった。
Q1
最近、観た展示は?
A1
Goods Shopp
2022年12月1日〜12日の企画で〈Dice&Dice〉で開催れた〈Goods〉のポップアップ
「昨年12月、福岡のセレクトショップ〈Dice&Dice〉で開催された、古物らのお店〈Goods〉のPOP-UPが面白かったです。洗練された服飾やアイテムが並ぶお店に対し、百科事典や世界史には収録されない ”その他” を収集・販売する〈Goods〉。ブランドが記されている服のとなりに名もなき小品が並んだ賑やかな店内では、ときに客の価値基準を問うような緊張感が見え隠れしていてよかったです」
「私は陶器の上にペーパーを貼って鮮やかな彩色が施された粗めの花器(写真上)を買いました。虚栄心をかたちにしたようなオブジェで気に入っています」
〈Goods〉
昨年3月にネットショップをオープンさせた古物とアートピースのお店。商品名を歌人や映像作家などさまざまな職業の人にお願いするなどユニークな見せ方も大きな特徴。東京では建築コレクティブのGROUPや写真家の濱田普とコラボしたポップアップなども開催した。
公式HPはこちら
〈Dice&Dice〉
住所:〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉2-1-43 DXD bldg
公式HPはこちら
Q2
最近、注目のアーティストは?
A2
井野口 匡
Portrait of Japnで入選した井野口 匡のセルフポートレート《Probaganda Hero》
「アーティスト・井野口 匡による《国士文通省》というプロジェクトに注目しています。これは、選挙ポスターの前で撮るセルフポートレイト『顔ハメ』など、街や人の観察を中心としたフィールドワークを通して採集したものを、写真と文章で発表するというもの。iPhoneで撮影されたようなインスタントな図像ながら、批評性を感じさせるような構成、それでいてただの悪戯のような、簡単に定義させないゆらぎと性格の悪さが好きです」
Instagramはこちら
6月8日[木]~6月11日[日]まで福岡の写真ギャラリー〈LIBRIS KOBACO〉にて井野口 匡の展示『先生、好きは映ります?♡』が開催。詳細な情報はギャラリーのInstagramにて。
Q3
最近、お気に入りのスポットは?
A3
余韻
写真左がギャラリースペースで、右が美容室
「福岡県久留米市、水天宮からほど近くに〈余韻〉という美容室/ギャラリーがあります。一見近年では珍しくない組み合わせですが、ここの佇まいに触れるたびに背筋が伸びるよいお店です。農作物と散髪を交換する『廻(かい)』という取り組みや、作家と協働する作品展など、かかわるすべての人たちとフェアであろうとする姿勢がお店のスタイルになっている稀有な存在だと思います」
Q4
最近、感動した作品は?
A4
ネクサスワールド
写真左がクリスチャン・ド・ポルザンパルク設計、右がレム・コールハース設計
「福岡市東区に、レム・コールハース(Rem Koolhaas)やスティーヴン・ホール(Steven Hall)、石山修武など、磯崎新のコーディネイトによって6人の建築家の設計で建てられた《ネクサスワールド》という集合住宅があります。天神地区の再開発や、福岡県立美術館のコンペ、西日本シティ銀行本店の解体など、建築に関するセンシティブな話題に事欠かない2020年代の福岡において、長く残って欲しい建物のひとつです。現在も入居者のいる集合住宅ですが、誰でも割と自由に見ることができます」
Q5
桜の季節になると思い浮かべる作品は?
A5
写真集『SMALL MYTHS』/原美樹子
1996年〜2021年まで写真家の原美樹子さんが撮りためたスナップをまとめた1冊。2022年発売
「好きな写真集のひとつに、写真家・原美樹子さんの『SMALL MYTHS』というものがあります。本書は、そのほとんどをファインダーをのぞかずに撮影する手法で、街中の風景から親密な生活空間までを記録した作者の未発表写真をまとめたもの。昨年刊行された本の中で、もっとも記憶に残っている作品集のひとつです」
SMALL MYTHS / Mikiko Hara (CHOSE COMMUNE, 2022)
Webサイトはこちら
Q6
次に観たい展示は?
A6
ねこのほそ道
“ねこはいつも、人工的な環境のなかでも決して手なづけられることのない、小さな自然である”。現在開催中の展覧会「ねこのほそ道」では隙間や内と外を自在に行き来する逸脱可能性として、また言葉の秩序から逃れる不可思議な存在として、自由、野生、ユーモア、ナンセンス溢れる、ねこのような現代美術を紹介
「豊田市美術館で開催されている展覧会『ねこのほそ道』を観に行きたいと思っています。他には、写真家・濱田晋さんのプロジェクト『HAMADA ARCHITECTS™️』の展示をいつか福岡で観たいです。直近では、4月18日からギャラリーg8(東京)で開催される『JAGDA新人賞展2023』を観に行きます」
佐々木健 《ねこ》 2017年 油彩、カンヴァス 個人蔵 Courtesy of the artist and Gomike
出展作家:泉太郎、大田黒衣美、落合多武、岸本清子、佐々木健、五月女哲平、中山英之+砂山太一
会期:2023年2月25日[土]-5月21日[日]
会場:豊田市美術館
Information
〈本屋青旗 Ao-Hata Bookstore〉
アートブックやZINE、プロダクトを中心に、視覚文化を基軸とした本屋として、2020年10月福岡市薬院新川沿いにオープン。書籍やプロダクトと連動した展示を積極的に行い、多くの方に気軽に立ち寄っていただける本屋となることを目指しています。
営業時間:12:00 - 19:00 水曜定休
住所:810-0022 福岡県福岡市中央区薬院3-7-15 2F
公式HPはこちら
instagramはこちら
DOORS
川﨑雄平
本屋青旗 店主
1988年福岡県生まれ。視覚文化をテーマに国内外の作品集を取り扱う書店、本屋青旗(福岡市)オーナー。店内のギャラリーにて開催されるグラフィックデザインや写真、美術などの展覧会の企画や、選書、出版などを手がける。
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