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2026.03.18

アーティストNARI (LITTLE FUNNY FACE) 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.44

Photo / Yuki Nasuno
Edit / Eisuke Onda

独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動する、とに〜さんが、作家のアイデンティティに15の質問で迫るシリーズ。今回は、唇だけを描いたユニークな顔のイメージで知られるアーティスト・NARI(LITTLE FUNNY FACE)さんのアトリエを訪ね、その制作についてうかがった。

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アーティスト松山梨子編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.43 はこちら!

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今回の作家:NARI (LITTLE FUNNY FACE)

LITTLE FUNNY FACEこと、NARI。唇のみを描き込む独自のスタイルが印象的なアーティスト。言葉にはならない心の機微、鑑賞者が自分自身を重ねたくなる登場人物を描き、多くの共感を得ている。異なる文化や背景を持つ人々の“ありのまま”の姿や人間くささ、多様な愛のかたちを表現することで、個性を尊重し、自由な生き方の大切さを社会に伝えている。個展の開催をはじめ、ポップアップやブランド・企業とのコラボレーションなど、ジャンルを越えて精力的に活動を展開中。主な仕事に、GU、Ameri vintage、CULLNIなど。

002-artist-identity-44《Small Steps》 (2026/コピックマーカー、ケント紙 )  

003-artist-identity-44NEWoMAN高輪 デジタルサイネージ掲出作品  (2025/コピックマーカー、ケント紙)  

 

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NARI (LITTLE FUNNY FACE)さんに質問です。(とに〜)

今月はどの展覧会を観に行こうか? 毎月「アート備忘録コーナー」を参考にしている方は多いことでしょう。そのキービジュアルを担当されているアーティストが、今回のゲストです。 洗練された都会でオシャレな雰囲気がありながらも、どこかシンパシーを感じる心地良さもある。その独特のスタイルから、勝手に外国人アーティストと思い込んでいましたが、ご本人は湘南出身の日本人とのこと。今回の機会が無かったら、きっと今後も勘違いしたままだったはずです。 
というわけで、改めましてゲストは“LITTLE FUNNY FACE”ことNARIさんです。“LITTLE FUNNY FACE”というのは、西川貴教さんにとっての「T.M.Revolution」、ACAねさんにとっての「ずっと真夜中でいいのに。」的なもの?まずはそこから質問していきたいと思います!


Q01. NARIさん? LITTLE FUNNY FACEさん? どうお呼びすればよいですか?

NARIですかね! LITTLE FUNNY FACEはグッズのブランド名として、また、イラストレーターとしての活動の際に使っています。原画にサインを入れる時は“NARI”です。

「よく名前の意味を聞かれるんですが、実は全然かっこいい由来じゃなくて、自分のことで。昔からユニークな顔だねと言われることが多くて、顔が小さいとも褒めてもらうことがあったので、それを掛け合わせただけなんです(笑)。でも語呂も、ロゴにした時の並びもお気に入り」

Q02. 作家を目指したきっかけは?

目指したことはなく、気づいたら作家の道を歩んでいたという方がしっくりきます。「絵描きさんになりたい」と言っていたのは4〜5歳くらいまで。結構現実的なところがあって、狭き門だとすぐに気がつき、早々に諦めてしまいました。
ファッションに目覚めて服飾大学に進学。そしてアパレル会社員時代、その企業のインスタグラム担当になり、挿絵をちょこちょこ描き始めました。その頃は今の作風とは全く違う、本当に思いつくままのスタイルで描いていました。でも流石に、ヌードや自由奔放に生きる人々を描いた作品は企業としてのアカウントでは投稿できず、自分のアカウントを作ってポートフォリオ的にインスタグラムを使い始めたことが大きなきっかけです。そこから様々な出会いやお誘いがあり、今の自分があります。

ARToVILLAの連載「アート備忘録」の2025年度期のキービジュアルを毎月手がけるNARIさん。「まさか自分がアーティストになるとは思っていなかったです(笑)」と振り返る。「服飾大学ではデザイン画を、卒業後はアパレル会社でイラストを描いていましたが、次第に自由に自分の作品を描きたいという欲が出てきて。生活の中で隠してしまうような人間臭いリアルをもっと描きたいと思い、Instagramで作品の発表を始めました。反応をもらえたのがすごく嬉しかったですね」

Q03. 代名詞というべき“目鼻を除き、唇のみを描き込む”スタイルで描く理由を教えてください。

「目は口ほどに物を言う」というように、目は感情やキャラクターをよく映し出すパーツ。私の作品は、鑑賞者がストーリーを組み立て、登場人物の情緒を自由に想像することで完成すると思っているので、その想像の可能性を広げるために敢えて目を描かない選択に辿り着きました。観賞のタイミング次第で様々な感情になると思いますが、正解や間違いはなく、どう感じてもらっても良いという気持ちの表れでもあります。

SNSで作品を発表していたNARIさん。当初はさまざまな画風の作品をアップしていたという。「今の目がなくて唇だけを描いた顔の作品を投稿したところ、鵠沼海岸で洋服店をやっていた友人から『この画風で描きためて展示してほしい』と声をかけてもらいました。それが大きなきっかけでしたね。それから同じスタイルで描き続けています。個展で自分の絵が人の手に渡ったとき、こんな風に夢が叶うのかと思いました」

Q04. 輪郭線をあえて描かないことにも理由はありますか?

はい。白いモチーフは敢えて背景の白をそのまま使って、見る人にそのアウトラインを想像してもらうということも私の作風の一つなのですが、そのために他の色も全ての輪郭を取り除いています。

また、想像の幅を広げるために極力シンプルな仕上がりにすることを心がけており、アウトラインがあると少し複雑な描き込みに感じてしまうからです。

描かれた人物のTシャツ部分はあえて塗らず、キャンバスの地の色を活かしている。この作品を刺繍したTシャツでも同様に、ボディの色を残す表現を採用した

Q05. さまざまな肌の色の人が登場しますね。肌の色に対するこだわりがあれば教えてください。

こだわらないことがこだわりです。この人はこういうナショナリティーのはずだ、という固定観念で肌に色付けをしないようにしています。深く考えずに手に取ったペンや、気ままに混ぜてできた色で塗るからこそ、「世の中にはいろんな人がいて当たり前」という自分の作風は成り立つ気がします。

Q06. アトリエの一番のこだわり or 自慢の作業道具など

天井まである大きな木の棚。本も画材も作品も、全て収納しています。前家主さんがこの部屋に合わせてDIYしたもので、解体せずに置いていってもらいました。作品制作だけでなく、オリジナルグッズ生産の中でミシン作業が必要なアイテムもあったりするので中央に置いています。幅も高さもシンデレラフィットでとっても使いやすいです。

「内見でこの部屋を訪れたとき、この空間で制作したいと思ったんです。住み始めて1年ほどですが、とても気に入っています」

Q07. 制作中によく視聴しているものは何ですか?

日本ハムファイターズが大好きで、よく野球の試合を流しています! 私の場合、描きたいものの構図やイメージが完全に固まってから制作に入るため、クリエイションより”作業”に近い感覚です。全くアートに関係ないものや試合解説なんかを聞いていても支障を受けることがありません。逆に、アーティスティックなインスピレーションを得たい時は流石に野球は観ません。映画や音楽を鑑賞することが多いです。

アトリエの本棚にはレコードや写真集、さまざまなオブジェが並び、部屋の随所にグリーンが配されている

Q08. 職業病だなぁと思うことは?

お店やレストランで、飾ってあるフレームや看板がほんの少しでも曲がっていたら、水平に直してしまう。商品よりも、並べ方や什器を見てしまう。

Q09. 今日は一日自分を思いっきり甘やかしていい日です。さて、何をしますか?

実家に帰って、ずっと犬とゴロゴロ、食べて寝るだけ。仕事のことは考えず、犬と同じIQになる。

制作机の上には、映画看板絵師だった祖父や実家で飼っていた犬の写真。「実家には今2代目のわんこがいるのですが、1代目とは小学校から大学までずっと一緒に過ごしていました。亡くなったあと、もっといろいろな場所に連れて行けばよかったという後悔が大きくて。アート備忘録の3月のビジュアル(写真下)に描いたのは、二人でやりたかったことの一つのシーンなんです」

Q10. 1年で1番、待ち遠しい日は何ですか?

年末に友人が主催する地元藤沢のパーティー! ここ最近は年末にかけてお仕事がぎゅっとかたまることが多く、休みがない日々が続くこともあるのですが、この日だけは翌日を気にせず飲み明かします!! 二日酔い覚悟です。

Q11. あの時の自分を褒めてあげたい! 何ですか?

コロナ禍で自分のギャラリーショップを作った時。(もう手放してしまいましたが)予算オーバーの物件、そして前例があまり見つからない中、よく挑戦したねと言ってあげたい。

「展示やポップアップのたびに空間づくりやVMDを全部自分でやってきたので、作っては壊してを繰り返すのが少し寂しくて。思い描いた通り飾り付けても、会期が終われば撤収。だからこそ、常設のスペースがあればもっと時間もお金もかけられるのに、という思いはずっとあって。突発的というより、制作を始めた頃から、自分のお店を持ちたい気持ちはありました」

運営していたギャラリーショップの内観

Q12. 青春時代、一番影響を受けたものは何ですか?

シルク・ドゥ・ソレイユと、デザイナーの石岡瑛子さん。今でも、可愛くてハッピーなだけじゃなくて、不穏な雰囲気や人間の陰を感じるものが好きなのは、この二つが関係していると思います。数年前、シルク・ドゥ・ソレイユの本拠地であるモントリオールも訪れました。

「映画や音楽は大きなインスピレーション。あと、シルク・ドゥ・ソレイユが大好き。初めて観た日本公演『コルテオ』は衝撃的でした。モントリオールは北米とヨーロッパの文化が混じり合った面白さ、そしてサーカスが舞台芸術のひとつとして確立されている素晴らしさも感じました」

Q13. 人生の最期に観たい映画は何ですか?

一番好きな映画という質問ではないので迷いましたが、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』。主人公が、歳をとるごとに若返るという中での複雑な感情や葛藤を乗り越えて、最後に心安らかに息を引き取る。その穏やかな姿は、死への恐怖を和らげてくれそうだなと思いました。

制作スペースの棚には、旅先で蒐集してきたスノードームや、影響を受けた石岡瑛子氏が衣装を手がけた映画『落下の王国』のポスターなどが並ぶ

Q14. 作品を通じてもっとも伝えたいことは何ですか?

大それたメッセージがあるわけではないです。人生の起伏、感情の波、喜びも悲しみも全てまるっと受け入れて、どんな姿もいいじゃん、自分を飾りすぎないで、ということ。辛い時は落ち込んで、嬉しい時は思いっきり笑う、忙しい時は枝に掴まるようなギリギリの精神状態(そんな絵も描きました)、ぜんぶ全部、後から笑える思い出になるよ!という感じ。

《悲壮》 (2024/コピックマーカー、ケント紙)

Q15. もしも作家になってなかったら、今何になっていたと思いますか?

現実的に答えると、アパレルのものづくりの世界もとても好きだったので、会社員を続けていたと思います。生まれ変われるなら、映画や音楽に関わる仕事に就きたいです。

NARIさん、ご回答ありがとうございました! 回答の言い回しの端々から、ご本人の人柄が感じられるようでした。なるほど。NARIさん自身の個性がそのまま作風に反映されているのでしょうね。個性が反映されているといえば、アトリエの雰囲気も。連載がスタートしてから、たくさんのアーティストのアトリエを紹介してきましたが、歴代でもっとも作品のイメージそのままのアトリエです。アトリエというより、ポップアップかと思ってしまいました。

喜びや笑いだけでなく、空中ブランコのように予想もしない危険や困難もある。そんな意味で、人生はサーカスに例えられることがありますが。可愛くてハッピーなだけでなく、さまざまな感情が込められたNARIさんの作品もまさに人生のようです。人生はLITTLE FUNNY FACEだ。(とに〜)

Information

NARI (LITTLE FUNNY FACE) ウィンドウ展示

■会期
2026年4月9日(木)~4月15日(水) ※最終日は14:00まで

■場所
Artglorieux GALLERY OF TOKYO(GINZA SIX1階交詢社通り側ウィンドウ) 
東京都中央区銀座六丁目10番1号  
※Artglorieux GALLERY OF TOKYO(GINZA SIX 5階)内での展覧会はございません。 

Artglorieux GALLERY OF TOKYOのHPはこちら
作品に関するお問合せはこちら

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ARTIST

NARI (LITTLE FUNNY FACE)

アーティスト

LITTLE FUNNY FACEこと、NARI。唇のみを描き込む独自のスタイルが印象的なアーティスト。言葉にはならない心の機微、鑑賞者が自分自身を重ねたくなる登場人物を描き、多くの共感を得ている。異なる文化や背景を持つ人々の“ありのまま”の姿や人間くささ、多様な愛のかたちを表現することで、個性を尊重し、自由な生き方の大切さを社会に伝えている。個展の開催をはじめ、ポップアップやブランド・企業とのコラボレーションなど、ジャンルを越えて精力的に活動を展開中。主な仕事に、GU、Ameri vintage、CULLNIなど。

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アートテラー・とに~

アートテラー

1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。 芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。 美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。 アートブログ https://ameblo.jp/artony/ 《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『名画たちのホンネ』(三笠書房) 

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