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- 「好きは、内側に秘めない」ニューヨーク・嶋佐和也が語る、軽快なフットワークで生きるススメ / 連載「わたしが手にしたはじめてのアート」Vol.45
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2026.03.11
「好きは、内側に秘めない」ニューヨーク・嶋佐和也が語る、軽快なフットワークで生きるススメ / 連載「わたしが手にしたはじめてのアート」Vol.45
Edit / Quishin & Mai Miyajima
Photo / Daisuke Murakami
Hair&Makeup / Megumi Matsumoto
自分らしい生き方を見いだし日々を楽しむ人は、どのようにアートと出会い、暮らしに取り入れているのでしょうか? 連載シリーズ「わたしが手にしたはじめてのアート」では、自分らしいライフスタイルを持つ方に、はじめて手に入れたアート作品やお気に入りのアートをご紹介いただきます。
お話を聞いたのは、バラエティ番組などで活躍中のお笑いコンビ・ニューヨークの嶋佐和也さん。音楽好きでも知られ、「ザ・グレイテスト・ヒッツ」(NHK総合)のMCや、コンビでの「ニューヨークバンド」の活動など、好きなことを軽やかに仕事へつなげている印象があります。
実は数年前からアートにも興味を持ち、永井博さんや江口寿史さんの作品などを購入しているそう。「アートの取材は今回がはじめてです」と語る嶋佐さんに、作品との出会いはもちろん、様々なカルチャーを楽しみ新たな仕事にもつなげる「好きなことは内側に秘めない」というスタンスについても語っていただきました。
前回はオルネ ド フォイユ店主・谷卓さんを紹介!
# はじめて手にしたアート
「アートを買ってみようかなという気持ちが生まれ始めていたとき、永井博さんの絵が思い浮かんだ」

アートに全然詳しいわけではないんですけど、数年前からちょっとずつ集めていますね。
はじめて手にしたのは、たぶん3、4年くらい前になるんですけど、永井博さんの作品です。ジクレー版画(インクジェットプリンターで印刷された限定版画作品のこと)で、数十万円くらいだった記憶があります。

永井さんのことは、昔から、大滝詠一さんのCDジャケットなどを通じて知っていて、絵も何度か観たことがありました。
コロナ禍が明けたくらいだったかな。自分の中でやんわりと、「アートを買ってみようかな」という気持ちが生まれ始めていたときに、永井さんの絵が思い浮かんだんですよね。永井さんの代表的なモチーフである、プールの描かれた絵が好きで。
それで、「自分がアートを買うときの1点目は、永井さんの絵がいいな」と思って、どうやったら永井さんの絵を購入できるのかをいろいろと調べてみたんですけど、やっぱりものすごく人気だから、原画なんてなかなか購入できない。
それでも永井さんの何かがほしいと諦められなくて購入したのが、この版画作品だったんです。
# アートに興味をもったきっかけ
「チャンピオンベルトのレプリカや、レゴブロック。広くなった家に好きなものを飾っていく中で、『絵も飾りたい』と思うように」

自分のアート体験をふり返ってみると、子どもの頃はお絵描き教室に通っていて、そのおかげで小学校低学年生の頃は絵がけっこう上手なほうでした。小学校高学年生の頃は、風間やんわり先生や和田ラヂヲ先生の漫画が好きで、自分も将来は漫画家になりたいと、4コマ漫画を描いていたりもしたんです。
なので、アートはわりと身近なほうだったのかもしれないけど、数年前まで自分が作品を買うなんて発想は、まったくありませんでした。
変わったきっかけは、引っ越しです。それまでは15年間くらい、家賃5万数千円の狭い部屋に住んでいたんですけど、ありがたいことにニューヨークとしていろいろとお仕事が増えてきた時期で、けっこう広い家に引っ越すことができたんです。
インテリアはそこまで凝っているわけではないんですけど、いろいろと好きなものは置いていて。学生時代からプロレスが好きなので、チャンピオンベルトのレプリカを置いたり、レゴブロックも好きで、部屋の至るところに飾ったり。
そういった中で、「何か一個くらい、絵も飾りたいなー」って気持ちになってきて。実際に永井さんの版画を買ってみたら、ちょっとアートに興味が湧いてきた。
というのも、飾ってみたら、「なんかいいな」ってテンション上がっちゃったんですよね。それで、もう一個ほしい、もう一個飾りたいってなって、永井さんの作品を購入してすぐに江口寿史さんの版画を購入しました。自分の中で唯一ちゃんと「知っている」と言えるのが、永井さんと江口さんだったので。

アーティスト・鈴木ひょっとこさんの記事はこちら!
僕は1986年生まれですけど、同じくらいの世代だと銀杏BOYZを好きな人が多く、ジャケットのアートワークを通じて江口さんのことを知る人も多かった。僕自身は、江口さんが描く女性が好きなんですよね。
# 思い入れのあるアート
「番組でもアートのことを学ぶ機会をいただいて。見取り図の盛山さんとスタッフさんと展示会に行って、作品を購入しました」
江口さんの版画を購入したのと同じ時期に、とろサーモンの久保田かずのぶさんが、自身の個展をやるとお聞きして、行かせてもらいました。ずっとお世話になっている大好きな先輩なので、久保田さんの絵を購入したいなと。
僕が展示会場に着いた頃にはけっこう売れていて、ギリギリ残っていたのがこちらの作品。久保田さんの作品だし、原画を購入したのははじめてだったので、うれしかったですね。

(キャプション)写真左が、久保田かずのぶさんの作品。隣がENDさんの作品
隣の作品は、渋谷にあるアパレルショップ「GReeD TOKYO」のオーナーである、ENDさんの絵です。たまにお店に行かせてもらうんですけど、ENDさんの作品だけでなくほかの作家さんの作品も、洋服と一緒に売られているのがおもしろい。
そういうふうに短期間でアートをポンポンと購入していったところ、番組でもアートのことを学ぶ機会をいただいて。
ダウンタウンさんがやられていた『リンカーン』の「後継番組だ!」と騒がれ、そのわりにすぐ終わってしまった『ジョンソン』(TBS)という伝説のバラエティ番組があったのですが、最終回の中で「現代アート投資」という企画をやったんです。そこに、日本橋のギャラリー「タグボート」の代表・徳光健治さんが来てくださり、いろんな現代アートを投資目線でご紹介してくださいました。
そのひとりが、手島領さん。手島さんの代表的なモチーフであるBABYBOYというキャラクターがすごく可愛いなと感じて、徳光さんに「ギャラリーに行かせてください」ってお願いしたんです。それで、見取り図の盛山晋太郎さんとジョンソンのスタッフさんと一緒に伺ったのですが、ちょうどそのときは、鈴木ひょっとこさんの展示会が開かれていて。
浮世絵のような画風に現代のアイテムをマッチさせている感じが、なんて言えばいいんだろう? ウィットに富んだ感じがして、素敵だなと感じました。それで、ひょっとこさんの絵を先に購入しました。

「作品から、あったかさみたいなものも感じられるので、寝室に飾っています」と嶋佐さん
そのあと、手島さんの展覧会にも行かせていただき、それをきっかけに、僕と盛山さん、ジョンソンのスタッフさんの3人に、手島さんがBABYBOYの作品をつくってくださいました。
3人だけのオリジナルサイズ、オリジナルカラーの作品で、すごくうれしかったです。

# アートと近づくために
「自分が興味のあることに対して、フットワーク軽く動くことは、自然と大切にしているのかも」
最近は行けていないんですけど、アートを購入するようになってから、ギャラリーやアートフェアに足を運んだりもしていました。
2025年3月に、ジャンボたかお(レインボー)に誘われて、ジャンボと青木マッチョ(かけおち)と一緒に、丸の内で開催された「アートフェア東京2025」に行ったのですが、とんでもない規模で驚きました。当たり前かもしれないけど、アーティストさんってこんなにたくさん存在していたんだ、と。
僕はそこで購入しなかったんですけど、国内外の作家さんによるいろんなアートが売られていて、歩いているだけで楽しかったです。
マッチョはいい出会いがあったみたいで、ベトナム人の学生の作家さんから、12連作になっている作品のうちのひとつを購入していました。

そういうふうに、自分が興味のあることに対して、フットワーク軽く動くことは、自然と大切にしているのかもしれません。僕の場合は人付き合いもそうですね。この人とは飲みに行くけど、この人とは行かないとか、変なこだわりをもちすぎない。
アートの世界も、ギャラリストと話してみて知れることがあったりと、自分がそこに行ったり話したりしてみないとわからないことがたくさんある。売り方とか、値段のつき方とか、雑貨やアパレルなどを扱うお店とは違う体験ができるのも、アートのある場所に足を運んでみることのおもしろさだなと思います。
# 好きなものとの付き合い方
「好きなことを内側に秘めておくタイプではないのかな。意識しているわけではないけど、仕事につながっている部分は大きいと思います」
よく音楽やプロレスのことを話しているからか、自分たちが影響を受けてきたものがニューヨークの活動にもよく現れているからか、この取材でも、「幅広いカルチャーに精通している印象です」なんて言われたんですけど、全然です(笑)。僕はただミーハーなだけ。飽きっぽいから、あまりひとつのことに熱中することもない。
そんな感じで、広く浅くなスタンスですけど、自分が好きなことは、こういった仕事の場でも芸人仲間といる時も、変に隠すことなく話しているかも。あまり内側に秘めておくタイプではないのかなって、今、話しながら思いました。

もちろん、「好きなことはあえて趣味に留めておいて、仕事にはしたくない」とか「好きな人のことを嫌いになりたくないから、会いたくない」ってタイプの人もいるし、それはそれで好きなことの守り方のひとつだと思うけど、僕はそれとは真逆なんですよね。
じゃあ「積極的に話すぞ」と意識しているかと言えば、そういうわけではないんだけど。ただやっぱり、秘めておかないことがいろんな仕事につながっている部分が、僕の場合は大きい気がします。たとえば、テレビ番組や音楽イベントでのMCとか、自分たちでもバンドをやったりとか。当然、こういう仕事だからいろんな機会に恵まれやすいというのはあるだろうけど、そもそも好きなことが仕事になるのは、うれしいことだなって感じています。
逆に、仕事を通じて新しい出会いがあったり、気になることができたりもするのも、本当にありがたいこと。とはいえ、好きなところに行くのも、好きなものを買うのも、やっぱりお金は必要なわけで。僕が今、一番興味があるのは投資ですけど、もっとお金に余裕ができたら、でっかいアートを買いたいですね。友沢こたおさんの大きな絵がほしい!
そんな夢も持ちながら、これからも楽しくがんばっていきたいです。

Information
ニューヨークバンドライブinジャパン2026 Zepp Shinjuku
■日時
2026/3/21(土)
17:30開場 18:30開演
■場所
Zepp Shinjuku(TOKYO)
■料金
前売6,300円 当日6,800円 ※来場者特典付き
詳しくはよしもとライブ公式HP
DOORS

嶋佐和也
芸人
1986年、山梨県富士吉田市生まれ。ニューヨークのボケ担当。NSC東京校15期生。養成所で出会った屋敷裕政と2010年にコンビを結成し、2019年 M-1グランプリで決勝進出、2020年にキングオブコントで準優勝。レギュラー番組「ラヴィット!」(TBS)、「ザ・グレイテスト・ヒッツ」(NHK総合)などで活躍。
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