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- 自然を鑑賞しに、箱根へ / 植本一子(写真家・エッセイスト)
ESSAY
2022.01.20
自然を鑑賞しに、箱根へ / 植本一子(写真家・エッセイスト)
Edit / Eisuke Onda
特集「部屋から、遠くへ」ではアートを愛する方々が、“遠く”を感じる作品についてのエッセイを綴ります。写真家でエッセイストの植本一子さんは、「ポーラ美術館」という場所こそ、非日常を感じることができるアートだと教えてくれます。家の近くで見るアートも良いけど、ちょっぴり遠出して鑑賞するアートには、きっと忘れられない思い出がついてくる。
ポーラ美術館
「箱根の自然と美術の共生」を理念に、仙石原に2002年開館。2021年はロニ・ホーンの個展を開催し話題に。美術館の周辺は「森の遊歩道」があり、ロニ・ホーンの立体作品や、 スーザン・フィリップスのサウンドインスタレーションなど、現在は合計25点の作品を森の中に展示している。
自然とアートが共生した「森の遊歩道」
家の近くの美術館へ気軽に行くことも好きですが、わざわざ遠出してでも行きたくなる美術館が私にはあります。そのひとつが「ポーラ美術館」です。初めて行ったのは確か初夏の頃。あの箱根の緑生い茂るの山の中をうねうねと車で登りました。新緑が気持ちよく、どんどん標高があがります。岸下には川があるせいか、山の合間に雲が垂れ込め、手を伸ばせば届きそうです。東京からすぐの場所にこんな風景が広がるのかと驚きます。
なかなかたどり着く気配がなく、不安になってきた頃にパッと現れるのがポーラ美術館。美術館というものには、展示を見るのが目的で行くことのほうが多いけれど、ポーラ美術館はそこへ行くという道程も大きいように思います。もちろん美術館内も気持ちよく、そのときに見た企画展「モネとマティス―もうひとつの楽園」も素晴らしかったのですが、帰る前に美術館裏にある「森の遊歩道」を歩いたことのほうが強く印象に残っていたりもします。それもひとつの作品であり、自然を鑑賞・体験できる。私にとってリフレッシュというよりも、行けば憑き物が落ちるような、神聖な場所として位置付けている美術館です。
DOORS
植本一子
写真家 / エッセイスト
2003年に 写真家としてのキャリアをスタートさせ 広告、雑誌など幅広く活躍中。2013年より下北沢に写真館「天然スタジオ」を立ち上げ、一般家庭の記念撮影をライフワークとする。エッセイストとしても活動、主な著書に『働けECD〜私の育児混沌記〜』(ミュージック・マガジン)『かなわない』(タバブックス)などがある。
volume 01
部屋から、遠くへ
コロナ禍で引きこもらざるを得なかったこの2年間。半径5mの暮らしを慈しむ大切さも知ることができたけど、ようやく少しずつモードが変わってきた今だからこそ、顔を上げてまた広い外の世界に目を向けてみることも思い出してみよう。
ARToVILLA創刊号となる最初のテーマは「部屋から、遠くへ」。ここではないどこかへと、時空を超えて思考を連れて行ってくれる――アートにはそういう力もあると信じています。
2022年、ARToVILLAに触れてくださる皆さんが遠くへ飛躍する一年になることを願って。
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