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2023.06.30
アーティスト 小野友美 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.19
独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動する、とに〜さんが、作家のアイデンティティに15問の質問で迫るシリーズ。今回は、細い線で、細かなモチーフを画面いっぱいに埋め尽くしてゆく作品を生み出すアーティスト、小野友美さんの背景に迫ります。
アーティスト 鈴木淳夫 編/連載「作家のアイデンティティ」Vol.18 はこちら!
今回の作家:小野友美
紙にペンで輪郭を描き、その内側を色鉛筆や水彩絵具で塗り分け、最後に描いたパーツをよけながらバックを塗るという手順で制作されています。モチーフとしては、植物、動物、模様が描かれる事が多く、画面の大きさによらずほぼ同じサイズの模様が増殖して描かれます。私生活では猫と暮らしていて、作品にも度々猫が登場します。鳥も以前からモチーフとして描かれていましたが、最近ではお化けのような生物や馬などもよく画面に登場いたします。レターセットやメモ帳といった商品にも作品が使われたり、タワーズ、ゲートタワーの冊子の表紙にも年間に渡り使用されました。
《TWINS》51.5×36.4cm /パネル、紙、アクリル、ペン/2022
小野友美さんに質問です。(とに〜)
花や草といった植物や、鳥や馬、おばけといった生きものたち(おばけは生きてないですが)が画面全体をびっしりと埋め尽くす。ファンタジックで物語性が感じられる絵画を生み出し続ける小野友美さん。その制作方法は実に独創的で、手間ひまをかけてじっくりと描かれています。きっと祈りを込めるように制作されているのでしょう。
・・・と思ったら、小野さん自身はHPでこのように語っています。
「わたしが描くのは、感情や物語、祈りではないただの絵です。」
物語でも祈りでもないとはこれ如何に?聞きたいことは山積みですが、15問に絞って質問いたします。
Q.01 作家を目指したきっかけは?
きっかけはなく、いつのまにか。

Q.02 モチーフはどうやって選んでいますか?
ふだん生活していて触れているもので、なぜか心惹かれるもの。

Q.03 最近お気に入りのモチーフはありますか?
馬
Q.04 色遣いのこだわりはありますか?
気持ちのいいかんじ。
使う色数は少なめです。(5色くらい)

Q.05 背景を最後に塗るのはなぜですか?
モチーフの発色が悪くなってしまうため。

Q.06 下書きせずに描いていると伺いました。描いている際、完成形は頭の中にありますか?それとも、描きながら完成が見えてくる感じですか?
大まかな完成形はあるのですが、描きながら変わっていきます。
そこがおもしろいです。

Q.07 感情や物語のない“ただの絵”とのことですが、「何を描いたのですか?」と聞かれたらどう答えていますか?
わたしたちは細胞でできていて、そのひとつひとつのなかに宇宙があります。
それが集まって、今はたまたま人間のかたちをしているのです。
絵は表面的な思考、感情ではなく、その奥にある、ただ在るもの。
揺らめきのようなものが表れたものです。
絵はただの絵でしかなく、それを見る人が良いな、とか、美しい、キライと感じるのです。
つまり、絵を通して自身のこころを見るということ。
でも、結局わたしのこころを映しているものでもあります。

Q.08 描いている際はどんなことを考えていますか?
とりとめのない思考を眺めています。
絵のことは絵を描いていない時のほうが考えています。
思考って何なんでしょう?ふしぎ。

Q.09 アトリエの一番のこだわり or 自慢の作業道具など
・uni-ball SigNO 0.8 金
・VAN GOGH GWVR 2号

Q.010 職業病だなぁと思うことは?
肩こり
Q.011 もっとも影響を受けた芸術家は誰ですか?
パウル・クレー
Q.012 青春時代、一番影響を受けたものは何ですか?
森博嗣、中島らも
Q.013 「わたしのこの一冊」を教えてください。
「喜嶋先生の静かな世界」森博嗣
ひたすら研究の道を進む主人公とその恩師、喜嶋先生のお話。
わたしは作家ですが、その在り方(理想も含め)は、なにか通ずるものがあります。

Q.014 猫を飼っていると伺いました。思いっきり猫の自慢をしてください。
完璧なかたち。仕草、表情が愛おしい。えも言われぬ良い匂い。
転がっていたり、暴れていたり、ぼーっとしていたり。
ずっと見ていても飽きません。毎日笑わせてくれます。
何もしてなくても、いるだけで良い。
猫は愛の具現化したもの。
Q.015 もしも作家になってなかったら、今何になっていたと思いますか?
素粒子の研究をしたいです。

ARTIST

小野友美
アーティスト
愛知県生まれ。紙にペンで輪郭を描き、その内側を色鉛筆や水彩絵具で塗り分け、最後に描いたパーツをよけながらバックを塗るという手順で制作されています。 モチーフとしては、植物、動物、模様が描かれる事が多く、画面の大きさによらずほぼ同じサイズの模様が増殖して描かれます。私生活では猫と暮らしていて、作品にも度々猫が登場します。鳥も以前からモチーフとして描かれていましたが、最近ではお化けのような生物や馬などもよく画面に登場いたします。 レターセットやメモ帳といった商品にも作品が使われたり、タワーズ、ゲートタワーの冊子の表紙にも年間に渡り使用されました。
DOORS

アートテラー・とに~
アートテラー
1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。 芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。 美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。 アートブログ https://ameblo.jp/artony/ 《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『名画たちのホンネ』(三笠書房)
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