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2023.06.23
アーティスト 鈴木淳夫 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.18
独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動する、とに〜さんが、作家のアイデンティティに15問の質問で迫るシリーズ。今回は、「彫る絵画」という新たな絵画表現で作品を生み出すアーティスト、鈴木淳夫さんの背景に迫ります。
現代アーティスト ヤクモタロウ 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.17 はこちら!
今回の作家:鈴木淳夫
自身の作品を「彫る絵画(Carved Painting)」と称し、幾重にもパネルの上に塗り重ねた絵具の層を彫刻刀で削り出すことで様々な図柄を描く作風で制作を重ねている。鈴木が作り出す画面は作家の息づかいすらも感じ取れる程の鮮明な行為の痕跡として鑑賞者に提示され、同時に「彫る」という反復行為によって顕在化した絵具の断層は、作家が作品と対峙した膨大な時間を物語っている。
《Carved Painting 》Acrylic on Wooden panel. 65.2×53.0×2.6cm | Acrylic, Plastic bowl. h7.5×w13.0×d13.5cm
鈴木淳夫さんに質問です。(とに〜)
「彫る絵画(Carved Painting)」という唯一無二のスタイルで作品を制作している鈴木淳夫さん。これは彫刻なのか?絵画なのか?そもそも、なぜこのようなスタイルを思い至ったのか。そして、なぜこのようなスタイルを続けているのか。ストイックな印象を受ける作品ゆえ、鈴木さんご自身もストイックな性格なのか。いろいろ気になる鈴木淳夫さんのアーティスト像を詳らかにすべく、15の質問で彫って彫って彫りまくたいと思います。
Q.01 作家を目指したきっかけは?
漫画家を目指して挫折したことがきっかけです。
Q.02 「彫る絵画」というスタイルが誕生したきっかけは?
自分なりの絵画表現を求めて試行錯誤した結果です。
Q.03 「彫る絵画」シリーズは約20年続いているそうですね!初期のものと今のもので大きく違うところはどこですか?
初期衝動で制作したものと、20年継続した上で作るものは違います。どちらもその時にしかできないものですが、初期衝動→巨大化→バリエーション→工芸化の螺旋階段を登って、現在2周目くらいだと思います。まだまだ何重にも登って初期には想像もできなかった地点に到達したいと思います。
Q.04 (語弊があったら申し訳ありません!)彫る作業自体は単調な気がするのですが、制作中に飽きたりしませんか?
「絵具を彫る」と決めることは、自分の制作方法を縛ることであり、まさにマンネリとの戦いになります。それこそが面白いところで、単調な仕事の中に変化を見つけたり、人生や生活、自然現象などと重ね合わせたりして飽きることがありません。むしろ時間が足りなくて死ぬまでにやりたいことの全てをやり切れるか不安です。
Q.05 これまで制作した中で最も大変だった作品は何ですか?
鑑賞者が作品と向き合う時に、労力を感じるということは制作に費やした時間を想像することであり、翻って自分の費やした時間や、死に向かう時間と向き合う装置としての役割を果たしていれば最高です。制作が大変だったことはないですが、巨大な作品を作った後の作品管理が大変です。
Q.06 彫刻ではなく、「彫る“絵画”」と名付けたのはなぜですか?絵画の定義をどう捉えていますか?
「絵画を作りたい。」という切実な欲求から絵具を彫ることに至りました。混色すると濁る、線を決定する、画面全体に手を加えたいなどを解決するために絵具を彫っています。絵画の定義は「支持体の上に絵具がのっている状態」であり、その独自性を出すことだと思います。私の場合、支持体の選択の延長に彫刻的な絵画も発生していると思っています。
Q.07 職業病だなぁと思うことは?
宿泊するとアトリエが恋しくなることです。
Q.08 アトリエの一番のこだわり or 自慢の作業道具など
6メートルある斜めの壁です。イーゼルの代わりにどこでも作品を掛けることのできる壁を作ってもらいました。
Q.09 あってもギリ許せるけど、できれば世の中から無くなってほしいものは何ですか?
先生と呼ばれることです。私は作りたいものを作って楽しんでいるだけなので、先生と呼ばれるようなことは全くしていないと思います。
Q.10 几帳面な性格ですか?それとも、大雑把な性格ですか?
作品的に几帳面と思われがちですが、大雑把だと思います。というか制作以外のことにほとんど関心がないために色々と問題が起きますが、それもすぐ忘れてしまうのでエピソードが思いつきません。
Q.11 健康のために気を遣っていることはありますか?
妻が私の健康を気遣ってくれてエアロバイクをプレゼントしてくれました。
嬉しかったのですが全く継続していないです。健康第一と思いつつ、アルコールは毎晩摂取してしまいます。
Q.12 最近感動して涙を流したことがあれば教えてください。
息子の誕生や日々の成長に感動します。しかし、涙は流れなかったので、感動で涙が流れる機会が訪れるのを期待しています。
Q.13 青春時代、一番影響を受けたものは何ですか?
さだまさしの曲を聴き、日本語の美しさを体感したことです。
Q.14 人生で一番ファンになった人物は誰ですか?
宮本浩次(エレファントカシマシ)です。なんとも言えない動きや情熱の表し方が気になります。
Q.15 もしも作家になってなかったら、今何になっていたと思いますか?
全く想像ができません。
鈴木先生・・・もとい、鈴木さん、ご回答ありがとうございました。
これと決めた制作スタイルに20年以上にわたって挑み続ける。続ければ続けるほど極まって、一方向に向かって深化していくようなイメージを頂いていましたが、そうではなくスパイラル状に上昇していくという回答が非常に興味深かったです。だからこそ、20年近くも続けてこられたのでしょうね。これから10年先20年先、鈴木さんの作品がどう変化していくのか。「彫る絵画」の継続を楽しみにしています。エアロバイクも是非継続されてくださいませ。
ARTIST
鈴木淳夫
アーティスト
1977年、愛知県生まれ、在住。静岡大学大学院教育学研究科を修了。 自身の作品を「彫る絵画(Carved Painting)」と称し、幾重にもパネルの上に塗り重ねた絵具の層を彫刻刀で削り出すことで様々な図柄を描く作風で制作を重ねている。鈴木が作り出す画面は作家の息づかいすらも感じ取れる程の鮮明な行為の痕跡として鑑賞者に提示され、同時に「彫る」という反復行為によって顕在化した絵具の断層は、作家が作品と対峙した膨大な時間を物語っている。
DOORS
アートテラー・とに~
アートテラー
1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。 芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。 美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。 アートブログ https://ameblo.jp/artony/ 《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館)
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