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ESSAY

2023.05.26

〈trelescope@art美術古書店〉店主・廣瀬友子に聞く、美しい山梨のアートと自然 / 連載「あの街のアートとカルチャー」Vol.5

Edit / Eisuke Onda
Design / ​​Hiroki IIMURA

最近、面白かった展示は? 注目のアーティストは? どんなカルチャーに触れて感動した? さまざまな場所で生活しながら、新しい文化を探す人たちに問いかける連載「あの街のアートとカルチャー」。

今回教えてくれるのは山梨県でネット書店〈trelescope@art美術古書店〉を営業する廣瀬友子さん。フルクサスやヨーゼフ・ボイスの膨大な資料を展示した山梨県・清里にあった〈旧清里現代美術館〉で働き、その後、美術館が閉館した際に預かった貴重な資料の数々を整理し、同書店で販売をしている。山梨県でアートと触れながら生活する廣瀬さんにオススメの展示やスポットについて聞いてみた。

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ESSAY

日・台の音楽シーンをつなぐ人・寺尾ブッタに聞く、台湾を感じるアート、漫画、音楽 / 連載「あの街のアートとカルチャー」Vol.4

  • #寺尾ブッタ #連載

Q1
最近、観た展示は?

A1 
大木ナーサリー「クリスマスローズ展示即売会」

販売イベントのフライヤー

「3月11日、12日の二日間〈evam eva yamanashi 形 -gallery-〉 で開催された大木ナーサリーさんの『クリスマスローズの展示即売会』に行きました。世界各地で探し出した原種を自身で交配し、年月をかけて理想に向かって創られるお花は、自然と大木さんが一緒に創り出した彫刻のようで、毎年とても楽しみにしています。クリスマスローズは俯いて咲くので、どんな顔をしているのか、株ごとに一輪一輪、アートを選ぶのと同じくらい真剣に、たしかめながら選びます」

『クリスマスローズの展示即売会』の様子

〈大木ナーサリー〉
八ヶ岳にある農園。クリスマスローズを始め、近年は南アフリカの球根類、ペラルゴニウム、原種シクラメンを中心に生産、販売。

公式HPはこちら

〈evam eva yamanashi 形 -gallery-〉
アパレルブランド〈evam eva〉が山梨に「衣食住」をテーマに構えたお店。「色(shop)」「味(restaurant)」「形(gallery)」の3つの建物がある。
6月17日(土)から7月10日(月)までは、 彫刻家 上田亜矢子氏による展覧会が開催予定。

住所:山梨県中央市関原885
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Q2
最近、注目のアーティストは?

A2
前嶋康太郎

現代アートチーム目[mé] と 新潟三条仏壇伝統工芸士によるプロジェクト「空壇どこ置く?」に前嶋さんが参加したときの映像

「私が山梨でやっている本屋〈trelescope@art美術古書店〉の軸になっているのはヨーゼフ・ボイスの思想。彼の言う『社会彫刻』(*1)という枠組みで考えると、茶道の茶人もアーティストだと考えています(茶道は元々総合芸術でもあります)」

*1……「すべての人間は芸術家である」と唱えたアーティストのヨーゼフ・ボイス。すべての人間は自らの創造性を駆使して社会をより良い形に彫刻しなければならないという呼びかけを指す。

さまざまな場所で「野点ニスト」と称したゲリラ茶会を開く前嶋さん。写真左は雪原で、右はカヤックの上で茶を点てた

「山梨にはとても創造的な茶事を数々行っている若いお茶人・前嶋康太郎さんがいます。アーティスト・名和晃平さんのアシスタントだった時期があるそうです。彼の茶事では現代アートの展覧会に行った時のような『凝り固まった概念を覆される』新鮮な体験をさせてもらっています。6月4日(日)には山梨の名刹〈天目山栖雲寺〉というお寺でお茶席を開かれるそうです。お茶を嗜まない方も大歓迎とのことなので是非」

前嶋康太郎
平成元年生まれの茶人。表千家茶道講師。これまでに約600回以上の茶会や茶事を行うほか、名刹・恵林寺では親子茶の湯教室なども行い地域文化の醸成を図る。

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フジモリ建築茶会(企画中)
現在、長野県茅野市のフジモリ建築(高過庵、低過庵、空飛ぶ泥舟、五庵)にて茶会を企画中です。詳細は決定次第、Instagramにて告知致します。

五庵の情報はこちら

茶会についてのお問い合わせはこちら

 

Q3
最近、お気に入りのスポットは?

A3
Gallery Trax

Gallery Traxの外観

「山梨に移り住んでから、大事に思っている場所が北杜市にある〈Gallery Trax〉。都心のギャラリーには無い空間と、やわらかな時間がながれている場所です。開廊した木村二郎さんには、私も生前からお世話になりました。二郎さん亡き後は永きに渡りパートナーの悦子さんがそのクオリティを保ちつつ、拡大させ続けています。今年開廊30周年だそうです。山梨においでになったらぜひ行って欲しい場所です」

2021年に〈Gallery Trax〉で開催された川内倫子 「as it is」の様子

〈Gallery Trax 〉
6月3日(土)から6月25日(日)までは、「TRAX 30TH ANNIVERSARY GROUP SHOW 」を開催。参加アーティストは五木田智央、大森克己、中島あかね。

住所:山梨県北杜市高根町五町田1245
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Q4
最近、感動したカルチャーは?

A4
その1:バンド「小仏」

「私の夫で音楽家の広瀬豊が、ディスクユニオンの〈ARCANGELO〉というレーベルからアルバムを出させてもらっています。そのレーベルメイトが甲府市を中心に活動する四人組 バンド・小仏です。昨年、〈甲府桜座〉で初めて彼らの演奏を体験。山梨にいながらにしてこんな演奏が聴けるなんて!と心底感動しました。ノーウェイヴパンクやプログレッシブロック、即興音楽などを下地にした独自のインスト楽曲......すごい音でした!! 機会を作って是非ともライブに行くことをオススメします」

小仏
山梨のインストノーウェイヴバンド。編成はギター、サックス、ベース、ドラム。

公式HPはこちら

 

A4
その2:穂坂ぶどうファクトリー

ぶどうを梱包する箱のイラストは中島あかねさん、デザインは竹廣りんさんが担当

「毎年、葡萄を送るならここ! 親戚やお仕事関係の方にお送りすると、『見たこともない立派な粒、食べたこともない甘さの葡萄が届いた!』と全国から歓喜の反応が来ます。すこぶる美味しい上に、アーティストとコラボでデザインされた箱もきっとARToVILLAの読者さんには気に入ってもらえると思います」

〈穂坂ぶどうファクトリー〉
ぶどうの名産地、山梨県韮崎市穂坂町でぶどうの生産と販売を行う。

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Q5
いまオススメのアートブックは?

A5
清里現代美術館アーカイブブック

アーカイブブック1『エフェメラ』

「私の本屋としての仕事は、〈旧清里現代美術館〉から預かった蔵書資料を整理販売・アーカイブ化することです。お店の営業をしながら、膨大な量の蔵書資料をどのようにアーカイブ化したらいいのか、一人悩んでいたところ、高円寺の〈tata bookshop〉の石崎孝多さんが『本にしましょう!』とディレクターをかって出てくださりました。そうして、清里現代美術館の仕事に感銘を受けた次世代の方達とともにアーカイブプロジェクトが立ち上がりました」

〈旧清里現代美術館〉にあったフルクサス、ボイスなどの貴重な資料の数々

「第1巻は旧清里現代美術館所蔵の貴重なインヴィテーションカードや紙もの資料=エフェメラを500pに渡って掲載する『エフェメラ』。まだ生まれたてのビジュアルブックです。貴重なエフェメラ(一時的な筆記物および印刷物)を手に取ったような感覚を楽しんでいただけるよう編集しました」

布で覆う環境アートで有名な「クリスト」。彼の70年代の展示の際に制作されたインビテーションカード(『エフェメラ』収録)

左が青い顔料を使った絵画作品が有名なアーティスト「イブ・クライン」、右がストライプインスタレーションで有名なダニエル・ビュレン。 (『エフェメラ』収録)

「このアーカイブブックは全3巻で、第2巻は『フルクサス』、第3巻は『ヨーゼフ・ボイス』と順々に出版してゆく予定です。旧清里現代美術館の外壁を模した渋い装丁は、デザイナーのTanukiさん、写真は尾原 深水さんによるものです。当店のネットショップでも販売いたしますが、全国の書店さんにも並ぶ予定です。ぜひお手に取ってご覧いただけましたら嬉しいです」

左からアーカイブブック1『エフェメラ』、ブック2『フルクサス』、ブック3『ヨーゼフ・ボイス』

『清里現代美術館アーカイブブック』
清里現代美術館を体感できるような、清里現代美術館らしいセレクトで、1960〜1980年代を中心とした貴重なエフェメラの数々を500ページにわたって収録。

5月24日にネット書店のtrelescope@art美術古書店でも購入可能。書店のHPはこちら。また、全国書店でも発売を調整中。
価格:9,350円(税込)

 

Q6
次に観たい展示は?

A6
荒川修作+マドリン・ギンズ《意味のメカニズム》 全作品127点一挙公開 少し遠くへ行ってみよう

東京・三鷹にある《三鷹天命反転住宅》などが有名な「荒川修作+マドリン・ギンズ」。セゾン現代美術館では13年ぶりに代表作《意味のメカニズム》の展示を開催する

「山梨から車でちょっとドライブして軽井沢のセゾン現代美術館の『荒川修作+マドリン・ギンズ《意味のメカニズム》 全作品127点一挙公開 少し遠くへ行ってみよう』。これは行かなくちゃと思っています。実は〈旧清里現代美術館〉の故・伊藤信吾氏は私の恩師でもあり、上司でもありました。昔、氏から贈られた荒川修作のリトグラフがリビングにあって毎日眺めていますが、荒川作品の謎は深まるばかり。展覧会に行ってその手がかりを探らなければ......」

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DOORS

廣瀬友子

書店オーナー

〈旧清里現代美術館〉で勤務した後、同施設の蔵書など貴重な資料を引き継ぎ、その整理と販売を行うネット古書店〈trelescope@art美術古書店〉をオープン。拠点は山梨。現在、清里現代美術館アーカイブブック 出版プロジェクトも進行中。

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