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- CHAI・YUUKIの創作の源。アートを集めて、「好き」がわかってきた / 連載「わたしが手にしたはじめてのアート」Vol.3
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2022.05.27
CHAI・YUUKIの創作の源。アートを集めて、「好き」がわかってきた / 連載「わたしが手にしたはじめてのアート」Vol.3
Edit / Moe Ishizawa
Photo / Tomohiro Takeshita
自分らしい生き方を見いだし日々を楽しむ人は、どのようにアートと出会い、暮らしに取り入れているのでしょうか? 連載シリーズ「わたしが手にしたはじめてのアート」では、自分らしいライフスタイルを持つ方に、はじめて手に入れたアート作品やお気に入りのアートを、エピソードとともにご紹介いただきます。
今回お話を伺うのは、4人組のニュー・エキサイト・オンナバンドCHAIのメンバー、YUUKIさん。バンド内ではベースのほか作詞やアートワークも担当し、ご自身で作家活動も行うYUUKIさんは、お家の中もユニークなアートでいっぱい。どのようにコレクションし、楽しんでいるのか、お話を伺いました。
気づいたらアートだらけだった
――YUUKIさんは、いつからアートに興味を持つようになったのでしょう?
小さい頃から絵を描くのも見るのも好きで、美術館はもちろん、絵本や街の看板も含めて全部好きだったかな。あとはあってもなくても生きていけるような「無駄なもの」が好き。アートは目的なくつくられるものもあるから、おもしろいなって思うの。
――お部屋全体が不思議なもので溢れていて、ワクワクします。こういったアイテムは、いつごろから集め始めたのでしょうか?
いつからかは忘れちゃったけど(笑)、CHAIで海外ツアーをする度に滞在する街のセレクトショップへ行って、「なんでこれをつくったんだろう?」って不思議に感じるフォルムのものとかを買うことが多いかな。集めようっていう意識じゃなくて、気づいたら集まっていたという感じ。
集めるうちにわかってきた、インスピレーションの元はアートが生み出す「ノイズ」
――YUUKIさんが初めて購入したアート作品を教えてください。
たぶん、2年くらい前から買い始めたんだけど、いつ頃買ったかはあまり意識したことがなくて。これが最初かなっていうものを2つ紹介するね。まずは、HONGAMAさんの陶器作品。当時から人気で、展示へ行ったら絵も陶器もすっかり売れてしまっていて。だけど、「これ、好きだな」って手にとったこの子だけまだ買い手がいなくて、迎え入れることができたの。このずっしり感がいいんだよね。それからしばらくして、私も陶芸教室へ行き始めたんだけど、なんと同じところにHONGAMAさんも通っていて。そこでつくる過程を見ることができたから、より愛着が湧いたね。
うちで飾るときは、貯金箱の前がお気に入り。この作品自体にお金を貯める機能はないけれど、一緒に並べると「ここはお金を貯める場所だよ」みたいな意味が生まれて、楽しいんだよね。
HONGAMA / 陶器作品
――もうひとつの作品はどんなものですか?
Kentaro Okawaraさんがつくった『TOKYO HORSE PROJECT』という馬をモチーフにした作品だよ。OkawaraさんもSNSで知った作家さんで、この作品は、SNSで告知されて速攻で「ほしいです」って申し込んだの。そうしたら、Okawaraさん自身が家まで届けに来てくれた。この作品はもしかしたら椅子として使うのかもしれないけれどね、私は観葉植物とかお花を飾る場所にしちゃってる!
Kentaro Okawara / 『TOKYO HORSE PROJECT』
――ほかに、最近のお気に入りの作品はありますか?
たくさんあるよ!(笑) まずは、Doki Mizuhoさんの土器。去年渋谷PARCOで開催された合同展で購入したの。薪の中にそのまま入れて焼くっていう、本当に土器の作り方でつくられていて。お気に入りポイントは、私に似ているところ(笑)。ね、似てるでしょ?
Doki Mizuho / 土器
あとは、これは直球のアート作品じゃないかもしれないけど、インドネシアのバリを拠点に活動するクリエイター・Haik Mosi Mosi(ハイクモシモシ)さんの『手のクッション』もお気に入り。これは私にしてはめずらしく実用性もあるもので、普段は窓際に飾っているけれど、休憩したいときはネックピローとしても使うよ。
Haik Mosi Mosi / 『Short Arm Cushion』
――アートを暮らしに取り入れるようになってから、変化を感じたことはありますか?
集めてみてから、自分の好きなものが何かわかってきた気がする。「カラフルなものが好きなんだな」とか「顔がついているものばっかりだな」とかね。あとね、系統がバラバラなのに、部屋に入れてみると意外とまとまっている感じがあって。私はたぶん真っ白な家には住めないタイプだから、好きなもののノイズに包まれていた方が落ち着くし、インスピレーションも湧きやすいなって思う。
「アウトプットしたい」の気持ちを大切に
――YUUKIさんはご自身でも絵を描いていますよね。普段接しているアートは、自身の創作活動にどう影響していると思いますか?
普段触れているアートの影響はめちゃくちゃある。でも、だからこそ、特定の作家さんや作品のコピーにならないように気を付けているの。これは音楽制作にも通じることだけど、作品をつくるときは、アートも雑誌も小説も音楽も、なるべく幅広く全方向から要素を取り入れるようにしてる。いっぱいいっぱいになるくらいにね。そうすると要素を選りすぐる必要が出てきて、そこからようやく自分のオリジナルが生み出せるんじゃないかなって思う。
今は部屋の一角をアトリエにしているんだけど、そこにも好きなものやアートを並べて、外の緑を眺めながら描いてる。片付けは苦手だから、画材はえいって突っ込めるようにワイヤーバスケットに収納しているよ。
――YUUKIさんのお部屋には、ご自身の絵もたくさん飾られていますね。お気に入りの絵はありますか?
裸婦の絵かなぁ。私、人間の裸体の絵が好きで。特に昔の絵画って、女性の裸体を描いた作品が多いじゃない? それを見ると「裸体を描きたい気持ち、めっちゃわかる!」ってなるの。丸みがあって、色々なところにカーブがあるから、描いたら絶対に楽しいよねって。
基本的に音楽活動の合間に絵を描くから、完成までの期間はどうしてもかかっちゃう。その日の気分によって見え方も変わるから、前の日まで微妙だなぁと思っていても「あれ、いいじゃん」って意識が変わることもあるんだ。一気に描き上げないからこそ変化を楽しめるし、少しずつ描き足して、直してを繰り返して試行錯誤することで、納得のいく絵に仕上げられているのかなって思う。
――そう聞くと、自分で絵を描いてみるのも楽しそうだなと思います。この絵は普段、どこに飾っていますか?
寝室だね、色っぽいから。暗いところに置くと、裸体がぽわっと浮かびあがって見えて、光が当たっている時とは全然違う見え方になるからいいんだよね。
――YUUKIさんの作品、どれも素敵で家に飾りたくなります。今後、展示の予定はありますか?
去年から、個人で「YMYM」というファッションとアートのブランドをスタートして、その展示が8月に代官山蔦屋であるから、そこで一緒に絵も展示しようと思っています。最近は他の作家さんとも交流が広がって、私自身も本気でアートに取り組めるようになったかも。これからも「アウトプットしたい」っていう強い思いを大切にしながら、描いていきたいな。
――最後に、アートに興味があるけれど、なかなか手を出せないという方へ向けて、メッセージをお願いします。
自分で面白さを見出せることができたら、たとえそれがゴミだとしても、アートっていう役割を与えられたものになる。だから、作家さんも想像しえなかった飾り方や使い方を、自分なりにやってみていいと思うんだよね。そうすることもまたアートだと思うし。アートって、つくる側にとっても、買う側にとっても、そのくらい自由でいいんじゃないかな。気分よくしてくれるもので囲まれたら、暮らしもきっと、彩りのあるものになりそうだよね。
DOORS
YUUKI
アーティスト
世界的に活躍する4人組、ニュー・エキサイト・オンナバンド「CHAI」の ベース・作詞担当CHAIのアートワークやアパレルなどをすべて手がけるマルチなクリエイター。
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