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2024.09.04
ルイーズ・ブルジョワの大規模回顧展から、長野と兵庫の芸術祭まで / 編集部が今月、これに行きたい アート備忘録 2024年9月編
Illustration / Nao Sakamoto
たくさんの展覧会やイベントの中から、絶対に行くべきアートスポットを編集部が厳選! 毎月のおすすめをピックアップしてご紹介します。
今月は六本木ヒルズのパブリックアートとして有名な蜘蛛の巨大彫刻の生みの親、ルイーズ・ブルジョワの個展がスタート。長野県と兵庫県で開催される現代アートの芸術祭は連休の予定におすすめです。
連載「街中アート探訪記」では《ママン》の知られざるエピソードを深堀り
「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」(森美術館・東京)
ルイーズ・ブルジョワ《ママン》 1999/2002年 所蔵:森ビル株式会社(東京)
20世紀を代表するもっとも重要なアーティストのひとりであるルイーズ・ブルジョワ。98歳で他界するまで制作を続けた彼女は、幼少期に経験した複雑でトラウマ的な出来事をインスピレーションの源として、記憶や感情を呼び起こすことで普遍的なモチーフへと昇華させ、希望と恐怖、不安と安らぎ、罪悪感と償い、緊張と解放といった相反する感情や心理状態をインスタレーション、彫刻、ドローイング、絵画で表現してきました。六本木ヒルズにある大きな蜘蛛のパブリックアート《ママン》が有名ですが、今回は約100点に及ぶ作品群を紹介し、活動の全貌に迫ります。家族の関係性の修復と心の解放がテーマとなった作品群のほか、近年世界的に関心が高まる初期絵画作品も展示します。
ルイーズ・ブルジョワ《ヒステリーのアーチ》 1993年 撮影:Christopher Burke © The Easton Foundation/Licensed by JASPAR and VAGA at Artists Rights Society (ARS), NY
「心のまんなかでアートをあじわってみる」(原美術館ARC・群馬)
ジャン=ミシェル オトニエル《Kokoro》 2009年
毎年、ここから発信する意味や意義を考慮したテーマの展覧会を開催する原美術館ARC。2024年第2期は「心のまんなかでアートをあじわってみる」と題した展覧会を実施。主に原美術館コレクションと原六郎コレクションから厳選した作品を展示し、作品に向かい合う人それぞれが自身の心の「内側」へと美術を引き寄せることを提案します。専門的な知識がないと楽しめないと思われがちな現代美術。でも本来「鑑賞」することの語源は「味覚」や「趣味」を意味する「taste」と同じで、そこには個人の「好み」で「判断」する行為も含まれます。正しい解釈とは何かと頭を悩ませることからは少しだけ距離を置き、自身の気持ちを拠り所に現代美術への関心を深めてみては?
増田佳江《遠い歌近い声》 2012年 ©Kae Masuda
先月紹介のイベントもまだまだ楽しめる!
「塩田千春 つながる私(アイ)」(大阪中之島美術館・大阪)
塩田千春 《The Eye of the Storm》 2022年 画像提供:バンコクアートビエンナーレ ©JASPAR, Tokyo, 2024 and Chiharu Shiota
塩田千春が生まれ故郷の大阪で、16年ぶりに開催する大規模な個展。現在ベルリンを拠点として国際的に活躍する塩田は、「生と死」という人間の根源的な問題に向き合い、作品を通じて「生きることとは何か」「存在とは何か」を問い続けています。本展は、全世界的な感染症の蔓延を経験した私たちが、否応なしに意識した他者との「つながり」に、3つの【アイ】(「私/I」「目/EYE」「愛/ai」)を通じてアプローチしようというもの。塩田の代名詞ともいえる糸を使った大規模なインスタレーション展示(新作や国内未発表を含む)のほか、絵画、ドローイングや立体作品、映像など多様な手法を用いた作品を通じて、 「つながる私」との親密な対話の時間をつくります。
塩田千春 《家から家》 2022年 写真:Sunhi Mang ©JASPAR, Tokyo, 2024 and Chiharu Shiota
「LOVEファッション―私を着がえるとき」(京都国立近代美術館・京都)
Comme des Garçons(川久保玲) 2020 年春夏 © 京都服飾文化研究財団、撮影:来田猛
京都国立近代美術館(MoMAK)と京都服飾文化研究財団(KCI)が共同で開催する本展では、KCIが所蔵する18世紀から現代までの衣装コレクションを中心に展示。人間の根源的な欲望を照射するアート作品とともに、ファッションとの関わりにみられるさまざまな「LOVE」のかたちを通して、人間の普遍的な営みである服を着ることの意味について考えます。18世紀の宮廷服をはじめとする美しい装いから、コム デ ギャルソン、ロエベ、ヘルムート・ラングなど現代のデザイナーの作品まで、「LOVE」から生み出された華やかな衣装がたくさん見られます。あわせて現代アートの展示も。ヴォルフガング・ティルマンス、AKI INOMATA、松川朋奈らの作品は必見です。
Loeweドレス(部分)2022 年秋冬 © 京都服飾文化研究財団、撮影:来田猛
「新・今日の作家展2024 あなたの中のわたし」(横浜市民ギャラリー・神奈川)
スクリプカリウ落合安奈《ひ か り の う つ わ》 2023年
「新・今日の作家展」は、横浜市民ギャラリーが開館した1964年から40年にわたり開催した「今日の作家展」を継承した展覧会。ギャラリー開館60周年となる今年は、スクリプカリウ落合安奈と布施琳太郎という、二名の若手アーティストを紹介します。スクリプカリウ落合安奈は日本とルーマニアの二国にルーツを持ち、「土地と人との結びつき」をテーマに、インスタレーション、写真、映像などさまざまなメディアで制作。布施琳太郎はスマートフォン発売以降の都市における「孤独」や「二人であること」の回復に向けて、自ら手がけた詩やテクストを起点に、映像作品やウェブサイト、キュレーションやイベントの企画など、多様な方面で活動。二名ともに本展のテーマを受け、新作を交えた展示構成を予定しています。
布施琳太郎《隔離式濃厚接触室》2020年 ウェブページ 撮影:竹久直樹
「神戸六甲ミーツ・アート2024 beyond」(ROKKO森の音ミュージアムほか・兵庫)
神戸六甲ミーツ・アートは神戸・六甲山上で毎年開催され、これまでに延べ520組以上のアーティストが参加した現代アートの芸術祭。今年のテーマは、「新しい視界 Find new perspectives.」。日常を少し離れ六甲山の魅力に触れながら、旅をするようにさまざまな価値観と出会う芸術祭を目指して開催されます。今年は過去最多となる61組のアーティストが参加。野外アートゾーンの拡充や、散策路沿いに作品を展示するトレイルエリアの増設、子ども向けワークショップ等の開催も予定されていて、これまで以上に六甲山の自然とアートを楽しめる内容に進化しています。夜間作品を期間限定で公開する「ひかりの森~夜の芸術散歩~」もROKKO森の音ミュージアム・六甲高山植物園で開催。
佐藤圭一《じいちゃんの鼻の穴に宇宙があった。》2023年 撮影:高嶋清俊
「北アルプス国際芸術祭2024」(長野県大町市・長野)
ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット[カナダ]《ささやきは嵐の目の中に》作品イメージ
長野県北西部の大町市を舞台に3年に1度開催される「北アルプス国際芸術祭2024」。今回の会場は、市街地エリア、ダムエリア、源流エリア、仁科三湖エリア、東山エリアといった、大町市の特色が色濃く現れる5エリア。今年は信濃大町の魅力とも言える「水・木・土・空」をテーマに掲げ、11の国と地域から36組のアーティストが参加します。目[mé]《信濃大町実景舎》や淺井裕介《土の泉》など、既存作品を観ることができるのはもちろん、千田泰広やケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット、アレクサンドラ・コヴァレヴァ&佐藤敬/KASAらの新作もお目見え。期間中、アオイヤマダと高村月によるパフォーマンスや、マームとジプシーによる演劇も開催されます。
アオイツキ[日本] Photo by Isobe Akiko
会期:2024年9月13日(金)〜11月4日(月・振休)
会場:長野県大町市(5つのエリア|市街地、ダム、源流、仁科三湖、東山)
公式サイトはこちら
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