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- 「アートは、セーフティネット」インテリアスタイリスト・Rika Morikawaが語る、心に寄り添う作品との暮らし / 連載「わたしが手にしたはじめてのアート」Vol.52
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2026.10.14
「アートは、セーフティネット」インテリアスタイリスト・Rika Morikawaが語る、心に寄り添う作品との暮らし / 連載「わたしが手にしたはじめてのアート」Vol.52
Edit / Quishin
Photo / Madoka Aikiyama
自分らしい生き方を見いだし日々を楽しむ人は、どのようにアートと出会い、暮らしに取り入れているのでしょうか? 連載シリーズ「わたしが手にしたはじめてのアート」では、自分らしいライフスタイルを持つ方に、はじめて手に入れたアート作品やお気に入りのアートをご紹介いただきます。
お話を聞いたのは、インテリアスタイリストのRika Morikawaさん。広告代理店での勤務を経てフリーランスとして独立し、中古物件のリノベーションプロデュースや、ブランドのポップアップイベント、モデルルームの空間スタイリングなどを幅広く手がけています。
99平米の自宅で本格的なDIYや3Dプリンタでの自作を楽しみながら、お気に入りのアートやインテリアに囲まれた等身大の暮らしぶりも、SNSで人気。ご自宅で、生活空間におけるアートの存在について伺うと、悩みや葛藤を抱えながら生み出された作品たちが、Rikaさんの心を支える「セーフティネット」になっていることを明かしてくれました。
前回はtricot・中嶋イッキュウさんを紹介!
# はじめて手にしたアート
「観ていて気分が明るくなるようなアートよりも、愛憎入り混じった動機の暗い作品のほうが好き」

アートとして一番最初に購入したのは、武田鉄平さんのアートポスターです。
20代後半だった頃に、神宮前にあるMAHO KUBOTA GALLERYで武田さんの個展が開かれていて、そのタイミングでギャラリーに伺って購入しました。
この絵を選んだのは、単純ですけど緑色が好きだったから。

私は、観ていて気分が明るくなるようなアートよりも、なんと言うか、愛憎入り混じった動機の暗い作品のほうが好きなんです。そっちのほうが励まされる。
広告代理店に勤務していた20代の頃は、仕事でしょっちゅうくよくよしていたのですが、武田さんも、まだ売れていなかった20代から30代の頃に、ひとりで辛抱強く描き続けてきたというバックグラウンドがあります。
そういうバックグラウンドが、武田さんの制作手法や「描くことを描く」というテーマにも現れている気がして、すごく自分の癒しになっているんです。
# アートに興味をもったきっかけ
「ギャラリーに足を運んだことをきっかけにアートに興味が湧いてきた。最近は『買うぞ!』という気持ちでアートフェアに」

子どもの頃から図工が好きで、欲しいものを自分でつくっていましたし、高校生の頃はバイト代で実家のソファを勝手に買い替えたりしていました。
この家は賃貸ですけど、床も洗面台も、原状回復できる範囲でDIYしています。床は暗いブラウンにしたくて上からタイルを貼っていて、洗面台は鏡が外せる形だったので、鏡ごと付け替えました。
そうやって学生時代からものづくりやDIYを楽しんできましたが、アートに興味をもったのは大人になってから。
20代半ばの頃に、大学時代からの友人に誘われて、はじめてギャラリーに行ったんです。それが先ほど挙げたマホクボタギャラリーで、武田さんの絵もそのときにはじめて観ました。ギャラリーに足を運んだことをきっかけにどんどんアートに興味が湧いてきて、絵画だけでなく、立体作品やインスタレーションも観るようになっていきました。

武田鉄平さんの作品集
武田さんのアートポスターを購入してからは、観るだけじゃなくてアートを買いたいという思いも強くなり、最近は「買うぞ!」という気持ちでアートフェアやフェスティバルなどに行っています。
特にMEET YOUR ART FESTIVALは、若手の作家とのいい出会いがありますし、買える展示会としてオススメです。
# 思い入れのあるアート
「FRAGILEさんは自分の弱さを肯定してくれるような存在です」
好きな作家も若手が多くて、ひとりは同い年の田島大介さん。ものすごいスケールのビル群を細部まで描かれていて、狂気的だなと感じます。
もうひとりは落合翔平さん。田島さんとはトーンが異なりますが、落合さんも「ここまで描くのか」というくらい線が細かい。何度か個展に足を運んでいて、まだ作品は買えていませんが、Tシャツを愛用しています。

アーティストデュオ・Nerhol(ネルホル)さんも、いつか現物を手にしたいなと思っているアーティストです。代官山 蔦屋書店にとても大きな作品が飾られているのを観て、すごく感動しました。実物でしか伝わらない魅力があるのですが、この作品集の通り、すごく細かい作業を繰り返していることがわかります。

ちょっとずつ異なる写真を地層のように積み重ねていき、この作品を生み出している。狂気的で自分好みです。
それから、友人のFRAGILE(フラジール)さんですが、私にとっては自分の弱さを肯定してくれるような存在です。

FRAGILEさんの制作のテーマは、「こわれやすいいきもの」。骨の形をしたこの作品もそうですが、陶器という硬い素材を使いながら「壊れやすさ」をテーマにしているギャップにも惹かれます。
# アートのもたらす価値
「ポジティブなものだけでは救われない精神状態のとき、落ち込んだ心に寄り添ってくれるのは作家の存在」

アートの中でも動機の暗い作品が好きだというのは、同居人との会話がきっかけで気づきました。
同居人がふとした会話の流れで「いざとなったら実家に帰れる」と言ったんです。そのとき「いいな」と思いました。私はいざというときに頼れる家族や実家というものがないので、とっさにそういった存在が出てくるのを羨ましく感じたんです。
じゃあ自分の場合はなんだろう?と考えたとき、浮かんだのは音楽のワンフレーズでも、本の中の一文でも、映画のワンシーンでもなく、アートでした。
インテリアや家具は基本的に、「暮らしを豊かにする」というポジティブな理由で生産されていますよね。私はインテリアが大好きですが、日々の生活の中でふと「部屋を素敵にすることに意味があるのかな」みたいな虚無感に襲われることがあるんです。そんな精神状態のとき、ポジティブなものに囲まれているだけではあまり救いにならなかったりする。
落ち込んだり悩んだときに自分の心に寄り添ってくれるのは、同じようにつらい思いや葛藤を抱えながら制作に打ち込んでいる作家の存在。だからアートは私にとってのセーフティネットなんです。

布施琳太郎さん『流すために』のアートポスター。「飾るのではなく、落ち込んだときに開いて、読んで、『ふう』と一息つく。そんな存在としてそばに置いています」
# 空間づくりで大切にする「自然さ」
「『自然さ』や『リアルさ』を大切にするのは、自宅の空間づくりだけでなく仕事にも通じる姿勢」
そういう意味で、好きなアートのある自分の家そのものが、セーフティネットとして成り立っているなと思っています。家の中が唯一、100%自由にコントロールできる空間でもあるので。3Dプリンタを購入してからは、照明や飼い猫のおもちゃをつくったりして楽しんでいます。

Rikaさんが3Dプリンタで制作したシャンデリア。伝統的な照明を、現代を象徴する技術とプラスチック素材で表現した
空間をスタイリングするうえで大切にしているのは、部屋のどこを見渡しても視線が留まる「全方位フォーカルポイント」にすること。部屋の一箇所だけを映えるように整えるのは人工的で不自然に感じてしまいますし、アートを飾っているスペースも含め、好きな場所がたくさんある生活のほうが豊かだなと感じるためです。
「自然さ」や「リアルさ」を大切にするのは、仕事にも通じる姿勢です。リーン・ロゼのポップアップで空間スタイリングをした際には、「非常識かも!?」と思いつつも、他ブランドの家具やインテリアも一緒に展示することを提案させてもらいました。部屋の中を同じブランドで固めるのは、ショーウインドウとしては正解でも、リアルではないと考えたからです。
私は情報系の学部出身で、建築畑出身者よりも設計にかかわる知識は薄く、コンプレックスを感じることもあります。一方で、常識に捉われない発想はおもしろがってもらえているので、そこはこれからも大切にしていきたいですね。

リビングの一角に並べられたアート。写真右から、知人が描いた中国の下町の風景、Rikaさん作のペイント、Rikaさん作の画鋲のアート
DOORS

Rika Morikawa
インテリアスタイリスト
1993年生まれ。大学卒業後、広告代理店勤務を経て、2026年3月にインテリアスタイリストとして独立。中古物件のリノベーションプロデュースや、ブランドのポップアップイベント、モデルルームの空間スタイリングなどを幅広く手がける。99平米のマンションで暮らす様子を発信するSNSも人気。
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