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INTERVIEW

2026.07.01

絵もニューヨークもクラフトビールも「好き」から世界がひろがった / アーティスト・MASAYA NAKAYAMAをかたちづくるものたち

Interview & Text / Kaori Komatsu
Photo / Masaya Nakayama ( provided by )

大丸東京店10階ART GALLERY2では、2026年7月15日(水)〜7月28日(火)の期間にMASAYA NAKAYAMA Solo Exhibition 「溶ける-Dissolve-」を開催します。

ニューヨークを拠点にアーティスト活動をスタートされたNAKAYAMAさん。きっかけとなった教師時代のエピソードから、活躍の足掛かりとなったクラフトビールの老舗ブランド「ブルックリン・ブルワリー」との出会いなどをインタビュー。日本では5年ぶりとなる個展の見どころとあわせて伺いました。

教え子の言葉をきっかけに、思い立ってニューヨークへ

――ニューヨークを拠点に活動するNAKAYAMAさん。アーティストになるきっかけや経緯は?

昔から絵を描くことは好きで大阪芸術大学に行ったのですが、在学中にも絵を描きたいという気持ちはありながら、周りに絵で生計を立てている人がいなかったこともあり、現実的ではないのかなと思って、絵を描くことを選択肢の外に置いて見ないふりをしてきました。教員資格を取り、中学校の教師を3年間やらせてもらったんですが、中学校3年生の担任をやっている時に生徒たちの進路相談の中で、生徒たちに「先生の昔の夢は何やったんや?」と聞かれて、ふと自分の過去のことを思い出してみたら、優秀でもなかった自分が今、教師ができているのは絵が好きだったからなんじゃないかと思ったんです。

――生徒の言葉が背中を押したんですね。

生徒たちが卒業した後に、リスペクトし合える関係を築き上げるにはチャレンジする姿を見せた方がいいのかなと思いました。そのまま思い立ってニューヨークに行きました。今思えばよく行ったなと思います(笑)。

――なぜニューヨークだったのでしょう?

昔から自分の好きだったアーティスト達が実際に活躍していた場所に一度住んでみたいなぁという単純な憧れがありました。実際にバスキアが住んでいた場所がまだ残ってい たり、渡米一年目の自分には充分すぎる刺激のあるでした。あとニューヨークには日本では見たことのないような数のギャラリーが集まっている場所もあるし、そのマーケットも凄く大きいんだよって友達に聞いて、今後芸術に関わる生き方をするのなら一度はそんなエリアを自分の目で観ていたほうが良いのかなと思ったのも理由の一つです。わりと軽い気持ちで決めたかもしれません。

 

新たな作風とブルックリン・ブルワリーとの出会い

――ニューヨークに移住して、どんなところから活動を始めたんですか?

ニューヨークに着いてすぐ運良く、とあるアーティストのアシスタントを経験させてい ただいて。その方の作品に携わる中で、現代アートのいろはを少しずつ学んでいきました。ただ最初の数年は言語や生活環境にも苦労し、自分の作家として理想とはかけ離れた日々でした。当時は大学から続けていた日本画材を使った作品を制作していたのです が、ある時思い切って今までやりたかったけれどなかなかしてこなかった技法を試してみようと思い、スタイルを根底から変えてみたんです。タイミングがよかったのか、ちょうどその時期にありがたいオファーや機会に恵まれはじめました。その過程のはじまりが、クラフトビールのパイオニアとしても有名なブルックリン・ブルワリーとのプロジェクトです。

ブルックリン・ブルワリーの店舗に描かれた壁画

――ブルックリン・ブルワリーとのコラボレーションが実現したきっかけは?

元々ブルックリン・ブルワリーのラベルデザインが好きで、友達とビールを飲む時にはやっぱりかっこいいビール飲みたかったから良く選んでましたね。作風をかえて一年後ぐらいにブルックリン・ブルワリーの関係者と思われる人達に片っ端からメールを送っていったんです。何か一緒にプロジェクトやらせて欲しいって。もちろん有名でもない私のメールに基本返信なんてあるはずないんですが、たまたまある関係者の目に留まり、ニューヨークの担当者に私の情報が行ったという流れです。一度ブルワリーのタップルームで飲もうと言う話になり、自分達のやりたいことや大切にしてることを話しました。意気投合してからタップルームの巨大な壁画をお願いされるまで、スピード感ありましたね。

――夢のある展開ですね!

そうなんです。そこから1週間、毎日そこに通って絵を描きました。ニューヨークでは誰もが知るソウルビアー。そんなブルックリン・ブルワリーと仕事をしたアーティストだと、ある種のお墨付きを貰い、今までリーチできていなかったアートファンとも繋がることができました。自分の知らない人が僕の作品を知っているという不思議な現象も初めて実感した出来事でしたね。

 

自然の中に自分が溶けていく感覚をインスピレーションに

――7月15日からは大丸東京店で個展がはじまります。どんな作品を展示されるのでしょうか?

個展のタイトルが「溶ける-Dissolve-」で、英語でいうところの"melt"ではなく "dissolve"のイメージでつけました。僕は"境界"をベースコンセプトに制作することが多いのですが、昨今のニューヨークでの暮らしの中で多種多様な境界を敏感に感じざるを得ない日々を生きています。今回の展示は私たちが無意識のうちに引いてしまう様々な境界を考える作品で構成しました。

《溶ける》 2026年 Acrylic, colored pencil, and collage on canvas 100号 1620×1303mm

自分がないという意味ではなく、固定されていなく常に変わり続けている意味をもつ"無我"や、 荘子の“物化”も今回一つ大事なワードになるかもしれません。とても広いテーマをパーソナルなモチーフを中心に表現することで、ミクロマクロ両方の視点で楽しんでもらえると思います。

メインビジュアルではここ数年新しい自然との繋がりを探るために始めたフライフィッシングの様子を描いた絵にしました。自然の中に自分が溶けていくような感覚。人間が 中心とされる都市からお邪魔させていただいてるような気持ち。腰まで水につかりじっ としているとさっきまで異物だった僕が自然と交わり、近づいてこなかった魚が私の膝あたりをかすめることがあります。そんな体験も今回の展示タイトルを決めた理由です。 僕の作品は一見絵の具の上に白い線を引いた様に見えるのですが、実際はテープを切り 貼りして下地を掘り起こしていて。線を描くより立ち上げるようなイメージに近いです。

フライフィッシングを楽しむNAKAYAMAさん

この世界の沢山の要素があってこそ、その存在が成り立つというとてもシンプルだけど 原点に還ました。その線は本当にあるのか、どう捉えるべきなのか。全て定まってもいないけど切り離されているわけでもなくて、私達は同じ変化の中にいるのです。

左:《物化 003》 2026年 Acrylic, colored pencil, and collage on canvas 265×240mm/右:《物化 003》 2026年 Acrylic, colored pencil, and collage on canvas 300×270mm

――将来的に取り組んでいきたいプロジェクトはありますか?

5年ぶりの日本での個展を期に、また色々な方達とも繋がっていきたいです。最近はキャンバスに絵を描くだけではなく、ありがたいことに壁画や企業とのコラボレーションなどを通じてまた沢山の面白い人達にも出会えているので、既存のアーティストイ メージの枠組みに捉われずに、チャレンジしていきたいと思っています。

《1717》 2026年 Acrylic, colored pencil, and collage on canvas 60号 1303×970mm

Information

MASAYA NAKAYAMA Solo Exhibition 「溶ける-Dissolve-」

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《Yellow Truck》 2026年 Acrylic, colored pencil on wood 650×1220mm

■会期
2026年7月15日(水)→28日(火)

■営業時間
10:00~20:00 ※最終日は16:00閉場

■会場
大丸東京店10F ART GALLERY2
東京都千代田区丸の内1丁目9−1

詳細はこちら

※出展作品は会期前に売約済みになる場合があります。

ARTIST

MASAYA NAKAYAMA

アーティスト

大阪市出身。大阪芸術大学美術学科日本画を卒業。2012年渡米。 現在はニューヨーク、ブルックリンを拠点に活動。日常に潜む「境界」にフォーカスし、下地の色を活かし作る線の表現で知られるアーティスト。都市とそこに生きる鳥達の不思議な関係に焦点を当てたニューヨークでの前回の個展から流れを引き継ぎ、さらに広い尺度で再構築を試みた今展「溶ける-DISSOLVE-」。自然との新しい繋がりを模索する中ではじめたフライフィッシングでの景色、自宅とアートスタジオを自転車で行き来する景色から切り取られるパーソナルなモチーフを起点としながら、現代に誰もが抱えうるテーマへのアプローチを試みる。 2019年、ニューヨークを代表するクラフトブルワリー「ブルックリン・ブルワリー」との大規模なアートコラボレーションを機に注目され、国内外のギャラリーやアートフェア等で作品を発表している。近年では壁画の世界的イベントJAPAN WALLSへの参加や、アスリート(総合格闘家 井上直樹選手、魅津希選手、総合格闘技団体KrazyBee)とのコラボレーション、アウトドアブランドSnowPeakやAce Hotelとイベントを行う等、活動は多岐に渡る。

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