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2023.02.17
画家 樋口新 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.14
独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動する、とに〜さんが、作家のアイデンティティに15問の質問で迫るシリーズ。今回は、美しい色彩でカメレオンを描く画家、樋口新さんの背景に迫ります。
絵描き Lee Izumida 編 /連載「作家のアイデンティティ」Vol.13はこちら!
今回の作家:樋口新
樋口さんは、日本画の確かな技術を活かし、色鮮やかなカメレオンの点描画を描く。身体の隅から隅まで点で覆われているカメレオンは、まるで今にも画面から飛び出してくるような生命力に溢れている。と同時に、数え切れないほど沢山の色と点で緻密に描かれた身体は、自らの生命力をすり減らして作品制作へと没頭する作家の姿を彷彿とさせる。樋口さん曰く、状況によって色が変化するカメレオンは、人間の複雑な感情の象徴と考えることもでき、彼が一滴一滴の色彩に込める思いがうかがえる。
樋口さんの優れた日本画の技術と、研ぎ澄まされた色彩感覚が生み出す独特な世界感は、国内のみならず海外でも高い人気を博している。
《春夏秋冬》/ 162×130.3㎝ / 高地麻紙、岩絵具、アクリル / 2019
樋口新さんに質問です。(とに〜)
カラフルで生命力溢れるカメレオンたち。ポップな姿してるだろ。ウソみたいだろ。日本画の画材なんだぜ、それで。油彩画だと思い込んでいたので、初めてその事実を知った時は、色をなして驚きました。さらに、驚くべきは点描の細かさ。一つ一つ、実に丁寧に描き込まれています。その途方もない制作作業を想像するだけで、思わず色を失いました。
さて、そんな新時代の日本画を描く樋口新さんとはどんな人物なのでしょうか?余計な色を付けたくなかったのでしょうか、これまであまりメディアで自身を語ることはほぼ無かった樋口さんに、15の質問を投げかけてみました。色よい返事、ご回答をお待ちしております。
Q.01 作家を目指したきっかけは?
大学在学中に竹内浩一先生の作品に出会い、感銘を受けたからです。
竹内さんの画集を見せながら「自分の迷っている状態を受け入れてもらえているように感じた」と語る樋口さん
Q.02 日本画の画材の一番の魅力は?
岩絵具の発色の良さです。例えばラピスラズリ、孔雀石、ターコイズはまさしく宝石を砕いで絵の具にしているので、とても綺麗に映ります。
日本画の絵具、岩絵具。こちらはラピスラズリ
にかわという繋ぎ剤を溶いて混ぜると美しい絵の具に
Q.03 制作中や制作後にリフレッシュするためにしていることは?
たまに家の前を三毛猫が通るのですが、その子に餌をあげることです。
Q.04 アトリエの一番のこだわり、あるいは自慢の作業道具は?
自然の光がよく入るところです。
京都にあるアトリエ、窓が大きくて気に入っているそう
窓際には金魚と2匹のウーパールーパーが光を浴びている
Q.05 職業病だな、と思うことは?
ドラマや映画を見ているときに、ストーリーよりも小道具や衣装に目が向くことです。
Q.06 彩色に関しての一番のこだわりは?
多様な色をなるべく使うことです。
Q.07 カメレオンを描く際に、特に難しい部分はどこですか?
周囲の環境とカメレオンの色のバランスを考えることです。
アクリル絵の具と岩絵具を多彩に使い分けて描かれる
Q.08 ごめんなさい!実は爬虫類が苦手です…・、そんな僕にカメレオンの魅力を教えてください。
カメレオンは周囲に合わせて擬態するばかりでなく、体の色を使ってコミュニケーションを取ります。そんな生き方が絵を描いて生きている画家に似ていて、面白いなと思っています。
Q.09 自分を色に例えるとなんですか?理由も合わせてお答えください。
いろんな色が複雑に入っていると思います。いろんな場所で様々な人に会うたびに変化していると思うからです。
樋口さんの画材道具がずらりと並ぶ
Q.10 好きな日本画家は誰ですか?
竹内浩一です。
Q.11 人生で一番最初に買ったCDはなんですか?
Kenoの「おはよう。」です。
Q.12 樋口さんにとって、青春の味はなんですか?
カルピスです。ちょっとしょっぱかったです。
Q.13 青春時代、一番影響を受けたものはなんですか?
中学時代、水泳部の顧問の先生です。
Q.14 近いうちに叶えたいプチ目標を教えてください。
同世代の尊敬する作家たちと同じ場で展示することです。
Q.15 もしも作家になってなかったら、今何になっていたと思いますか?
ジュエリーデザイナーになりたかったです。
カメレオンというと、「カメレオン俳優」「カメレオン女優」のように、役者に例えられがちですが、色を使ってコミュニケーションを取るという意味では、確かに画家に近いのかもしれませんね。
実際のカメレオンは、周囲の色に合わせて擬態することもあるわけですが、作品的にはカメレオンを引き立たせるために周囲の色とのバランスを考えなくてはならず。むしろ、カメレオンとは真逆の発想で描かれているのが興味深いです。
さて、2月22日から始まる「SIGNS OF A NEW CULTURE Vol.12」では、樋口さんのプチ目標が早くも叶いますね。周囲に他の画家たちの作品が飾られた中で、樋口さんがどのように自分の色を出すのか。展示を楽しみにしております!
information
SIGNS OF A NEW CULTURE vol.12
■会期
2023年2月22日(水)→3月7日(火)
※2月28日(火)、3月7日(火)は17時閉場
■会場
大丸東京店 11階催事場
Google Mapで開く
■入場料
無料
ARTIST
樋口新
画家
樋口は、日本画の確かな技術を活かし、色鮮やかなカメレオンの点描画を描く。身体の隅から隅まで点で覆われているカメレオンは、まるで今にも画面から飛び出してくるような生命力に溢れている。と同時に、数え切れないほど沢山の色と点で緻密に描かれた身体は、自らの生命力をすり減らして作品制作へと没頭する作家の姿を彷彿とさせる。樋口曰く、状況によって色が変化するカメレオンは、人間の複雑な感情の象徴と考えることもでき、彼が一滴一滴の色彩に込める思いがうかがえる。 樋口の優れた日本画の技術と、研ぎ澄まされた色彩感覚が生み出す独特な世界感は、国内のみならず海外でも高い人気を博している。
DOORS
アートテラー・とに~
アートテラー
1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。 芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。 美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。 アートブログ https://ameblo.jp/artony/ 《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館)
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